生田耕作氏の名訳で知られ、'60年代末の日本文学界を震撼させたバタイユ。三島由紀夫らが絶賛した一連の作品群は、いまも暗い輝きを失っていない。訳者・中条省平は、バタイユ本来の徹底した論理性と、日常語と哲学的表現とが溶けあう原作の味を生かすことを主眼に新訳した。それぞれの作品世界にあわせた文体が、スキャンダラスな原作の世界を、すみずみまで再現する。
見神体験を描いた小説とされる「マダム・エドワルダ」は、一人の娼婦との出会いを通して、エロティシズムの深奥に迫る。涜神と性的な強迫観念をテーマに書かれた「目玉の話」は、サドの作品に比すべき幻想譚であり、読む者を夢魔の世界へと誘う
「私」が出会った娼婦との戦慄に満ちた一夜の体験(マダム・エドワルダ)。目玉、玉子...球体への異様な性的嗜好を持つ少年と少女が繰り広げる破廉恥な変態行為。親たちから逃れ、性的冒険を求めて旅に出た二人は、涜神行為の限りを尽くす(目玉の話)。
ジョルジュ・バタイユ Georges Bataille |
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[ 1897 - 1962 ] フランスの思想家・作家。「死」と「エロス」をテーマに、広範な執筆活動を展開し、現代文学、現代思想に大きな足跡を残した。また、文化人類学の知見に基づいて、生産よりも「消費」を重視する独自の社会経済理論を築き、現代文明の進む方向を正確に予言した。主著に『内的体験』『エロティシズム』『呪われた部分』など。 |
[訳者] 中条省平 Chujo Shohei |
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1954年生まれ。学習院大学教授。仏文学 研究のほか、映画・文学・マンガ・ジャズ 評論など多方面で活動。主著に『カミュ伝』『恋愛書簡術』『反=近代文学史』『フランス映画史の誘惑』。訳書に『マダム・エドワルダ/目玉の話』(バタイユ)、『恐るべき子供たち』(コクトー、共訳)、『肉体の悪魔』 (ラディア)、『花のノートルダム』(ジュネ)、『消しゴム』(ロブ=グリエ)、『狭き門』(ジッド、共訳)、『にんじん』(ルナール)、『すべては消えゆく』(マンディアルグ)ほか多数。 |