《安西シェイクスピア》の第1弾は『リア王』。4大悲劇の中核をなす代表作だ。絶大な力を誇ったリア王が3人の娘に国を譲ろうとして始まった、血塗られた愛憎劇。本当に信じられるのは誰なのか。裏切り、忠誠、そして情愛の、極限の姿が描きつくされる。
巨星シェイクスピアの翻訳は多数あるが、古色蒼然とした訳か、わかりやすいだけの〈軽い〉訳も多かった。訳者・安西徹雄はシェイクスピア研究の泰斗であると同時に演劇集団 "円"の演出家としても活躍。実際の舞台上演を念頭に置いた、ありありと情景が浮かぶ新訳が完成した。戯曲を読む楽しみを追求しつつ、原作の気品と格調、ユーモア、激しい罵詈雑言などが忠実に再現された。これぞ名訳。
突然引退を宣言したリア王は、誰が王国継承にふさわしいか、娘たちの愛情を試す。しかし結果はすべて王の希望を打ち砕くものだった。最愛の3女コーディリアにまで裏切られたと思い込んだ王は、疑心暗鬼の果てに心を深く病み、荒野をさまよう姿となるが......。
ウィリアム・シェイクスピア William Shakespeare |
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[ 1564 - 1616 ] イギリスの劇作家、詩人。若くして故郷を出、ロンドンで役者となった後、座付作者として活躍。『ハムレット』『オセロウ』『リア王』『マクベス』の四大悲劇など、37編の劇を残し、エリザベス時代を代表するばかりか、時代と国境を超えて、世界文学史上最大の作家の一人に数えられている。 |
[訳者] 安西徹雄 Anzai Tetsuo |
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1933年生まれ。元上智大学名誉教授。また、「演劇集団〈円〉」を拠点に、シェイクスピアをはじめ、多くの芝居の翻訳・上演にたずさわった。2008年5月死去。著書に『彼方からの声』『シェイクスピア劇四〇〇年』ほか。訳書に『リア王』『ジュリアス・シーザー』『ヴェニスの商人』『十二夜』『マクベス』『ハムレット Q1』(シェイクスピア)、『シェイクスピアの謎を解く』(イアン・ウィルソン)ほか多数。 |