時空を超える〈タイムマシン〉を発明したタイム・トラヴェラーは、80万年後の世界へ飛ぶ。そこは、地上に住む華奢で穏やかなイーロイ人と、地底をねぐらにする獰猛なモーロック人という2種族による原始的な階級社会だった……。SFの不朽の名作を、巽孝之氏の解説で読み解く。
内容時間旅行が物理学の領域だからといって本作をSFの嚆矢とすること自体、眼鏡違いではあるまいか。「タイムマシンは永劫の未来に飛躍したウェルズの想像力が自ずと実現した発明」と受け取ったほうがいい。(訳者)
巽孝之(慶應義塾大学文学部教授・英米文学専攻)
ハーバート・ジョージ・ウェルズ Herbert George Wells |
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[ 1866 - 1946 ] イギリスの小説家。批評家。ケント州ブラムリーで、商人の子として生まれる。生地商や薬局に徒弟奉公に出されたが、1884年よりロンドンの科学師範学校で奨学生として学ぶ。ここで進化論者である生物学者ハックスリーから影響を受ける。その後、教職に就いたが肺病にかかり、療養中に短篇小説を雑誌に寄稿する。1893年ころから執筆に専念、『タイムマシン』『モロー博士の島』『透明人間』『宇宙戦争』など、自然科学の素養を元に、SF小説のヒット作を続々と生み出す。また、ジャーナリスト、批評家、社会主義者としても旺盛な執筆活動を展開した。 |
[訳者] 池 央耿 Ike Hiroaki |
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1940年生まれ。翻訳家。訳書に『クリスマス・キャロル』(ディケンズ)、『南仏プロヴァンスの12か月』(メイル)、『新・人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』(フルガム)、『アバラット』(バーカー)、『パイド・パイパー』(シュート)、『キーパー』(ピート)、『失われた地平線』(ヒルトン)、『ガーネット傑作集』、『タイムマシン』(ウェルズ)、『ヘンリー・ライクロフトの私記』(ギッシング)、『二都物語』(ディケンズ)ほか多数。 |