19世紀後半のフロリダ。人里での摩擦を避け、矮樹林(スクラブ)が広がる土地で厳しい開墾生活を送るバクスター一家。ある日、父ペニーがとっさに撃ち殺した雌シカの傍らに、母を失った仔ジカが立ち尽くしていた。息子ジョディは仔ジカに魅了され育てたいと両親に懇願する......(『鹿と少年』改題)
『仔鹿物語』という題名から、子供向けの感傷的な話と思われるかもしれないが、本書はそんな甘い物語ではない。圧倒的筆力で時代と人間を描いた本格的な「大人向け」の小説として楽しめる傑作である。
マージョリー・キナン・ローリングズ |
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1896 -
1953 ]
アメリカの小説家。ワシントンDCに生まれ、子どものころから創作コンテンストに度々入賞し才能を発揮する。大学を卒業後、新聞記者になるが、作家としては芽が出なかった。1928年、旅行でフロリダ半島の奥地を訪れ、原生林の残る自然に感動し、居を定める。以降はこの地方を舞台にした小説を生み出し、1938年の「The Yearling」(本書)がベストセラーとなり、ピュリッツァー賞を受賞する。他にも数々の長短編小説を発表するが、1953年に脳出血で死去。 |
[訳者] 土屋京子 Tuchiya Kyoko |
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1956年生まれ。東京大学教養学部卒。翻訳家。訳書に『ナルニア国物語』全7巻(C・S・ルイス)、『あしながおじさん』(ウェブスター)、『トム・ソーヤーの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』(トウェイン)、『小公子』『小公女』『秘密の花園』(バーネット)、『仔鹿物語』(ローリングズ)、『部屋』(ドナヒュー)、『ワイルド・スワン』(ユン・チアン)、『EQ〜こころの知能指数』(ゴールマン)ほか多数。 |