痛烈かつ辛辣なアフォリズム!

読書について

読書について

ショーペンハウアー    
鈴木芳子  訳   

「読書とは自分の頭ではなく、他人の頭で考えること」
「多読に走ると、自分の頭で考える力が失われてゆく」

内容

「読書は自分で考えることの代わりにしかならない。自分の思索の手綱を他人にゆだねることだ」「多読に走ると、自分の頭で考える力が失われてゆく」......。
読書好きのみなさんには、ドキっとする、耳の痛い話ではありませんか? なにを、どう読むか。あるいは読まずにすませるか。読書の達人であり一流の文章家だったショーペンハウアーが放つアフォリズムの数々。率直さゆえに辛辣に響く言葉の奥底には、哲学者ならではの人生哲学と深いヒューマニズムがあります。それが本書の最大の魅力です。読書について書かれた本は世にたくさんありますが、本書を抜きには語ることはできません。


●悪書は知性を毒し、精神をそこなう。良書を読むための条件は、悪書を読まないことだ。
●本を買うとき、それを読む時間も一緒に買えたら、すばらしいことだろう。だがたいてい本を買うと、その内容までわがものとしたような錯覚におちいる。
●読書しているとき、私たちの頭は他人の思想が駆けめぐる運動場にすぎない。 読書をやめて、他人の思想が私たちの頭から引き揚げていったら、いったい何が残るだろう。
●かれら(学者)は多読のために、愚かになっている。
●ひっきりなしに次々と本を読み、後から考えずにいると、せっかく読んだものもしっかり根を下ろさず、ほとんどが失われてしまう。
[書評]
  • 毎日新聞 2013年8月11日/今週の本棚(評者:荒川洋治さん)自分の頭で考えない人のための読書哲学
  • 読売新聞 2013年5月19日/ポケットに1冊
アルトゥール・ショーペンハウアー    Arthur Schopenhauer
[ 1788 - 1860 ]    ダンツィヒ生まれのドイツの哲学者。「生の哲学」の祖。主意主義とペシミズムの代表者。ゲッティンゲン大学で自然科学・歴史・哲学を学び、プラトンとカント、インド哲学を研究する。イェーナ大学で論文「充足理由律の四根について」によりドクトルの学位取得後、1820年ベルリン大学講師となったが、当時ヘーゲル哲学が全ドイツを席巻、人気絶頂のヘーゲル正教授に圧倒され辞任し、在野の学者となる。主著である『意志と表象としての世界』(1819-1844)を敷衍したエッセイ『余録と補遺』(1851)がベストセラーになると、彼の思想全体も一躍注目を集め、晩年になってから名声を博した。フランクフルトにて没。ニーチェやヴァーグナーをはじめ、哲学・文学・芸術の分野で後世に大きな影響をおよぼした。
[訳者] 鈴木芳子    Suzuki Yoshiko
1987年、早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。翻訳家・ドイツ文学者。訳書に『読書について』『幸福について』(共にショーペンハウアー)、『イタリア紀行』(ゲーテ)、『宮廷画家ゴヤ』 (フォイヒトヴァンガー)、『ダダ大全』(ヒュルゼンベック編著)、『醜の美学』(ローゼンクランツ)、『ベビュカン』『二十世紀の芸術』(共にカール・アインシュタイン) ほか多数。共著に『私が本からもらったもの 翻訳者の読書論』。
書評
2023.03.04 東京新聞 公開選書 あなたに贈る本/辻山良雄さん(本屋 Title 店主)