不幸な子供ばかりをさらうビグア大佐の秘密とは......

ひとさらい

ひとさらい

シュペルヴィエル    
永田千奈  訳   

若き日の澁澤龍彦も愛した、切なくも官能的な物語。

作品

大佐の過激な「親心」には誰もが同情を寄せる。一方、それが欲情や嫉妬といったごく単純な感情のために悲劇的結末を招くことに衝撃を受けるだろう。「家族のありかた」を描いたシュペルヴィエルの傑作、第二弾。


物語

貧しい親に捨てられたり放置されたりしている子供たちをさらうことで自らの「家族」を築き、威厳ある父親となったビグア大佐。だが、とある少女を新たに迎えて以来、彼の「親心」は、それとは別の感情とせめぎ合うようになり......。心優しい誘拐犯の悲哀がにじむ物語。待望の新訳!


ジュール・シュペルヴィエル    Jules Supervielle
[ 1884 - 1960 ]    ウルグアイの首都、モンテヴィデオで生まれた。両親はフランス人。10歳のときにフランスに戻り、フランス語で書くことを選ぶ。2つの国に引き裂かれた人生から、独特の複眼的な視点による、幻想的な美しい作品を描いた。詩人、作家。詩集『重力』など。戦後日本の詩人たちに大きな影響を与え、現在に至るまで、コアなファンをもっている。
[訳者] 永田千奈    Nagata China
東京生まれ。翻訳家。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒。主な訳書に『海に住む少女』『ひとさらい』(シュペルヴィエル)、『女の一生』(モーパッサン)、『孤独な散歩者の夢想』(ルソー)、『クレーヴの奥方』 (ラファイエット夫人)、『椿姫』 (デュマ・フィス)、『ある父親』(シビル・ラカン)、『それでも私は腐敗と闘う』(イングリッド・ベタンクール)、『サーカスの犬』(リュドヴィック・ルーボディ)、『印象派のミューズ』(ドミニク・ボナ)などがある。