2013年3月に死去したナイジェリアの作家チヌア・アチェベ。アフリカの伝統的社会に生きる人々の姿、そしてヨーロッパの植民地支配が壊したものを痛烈に描いた彼の作品群は、その後の世界の作家たちに大きな影響を与えた。
古くからの呪術や慣習が根づく大地で、黙々と畑を耕し、獰猛に戦い、一代で名声と財産を築いた男オコンクウォ。しかし彼の誇りと、村の人々の生活を蝕み始めたのは、凶作でも戦争でもなく、新しい宗教の形で忍び寄る欧州の植民地支配だった。「アフリカ文学の父」の最高傑作。
チヌア・アチェベ Chinua Achebe |
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ナイジェリア出身のイボ人作家。1930年、当時まだイギリス植民地であったナイジェリアに生まれ、熱心なキリスト教徒の両親に厳しく教育される一方、日常的には現地の文化や宗教儀礼に慣れ親しんだ。現地の、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・イバダン(現イバダン大学)で英語やラテン語、歴史を学び、大学卒業後はナイジェリア放送協会に勤務。1958年『崩れゆく絆』がロンドンで出版されると、アフリカ諸国独立の機運のなか世界中で賞賛される。その後も『もう安らぎはえられない』『神の矢』などの長編、短編集などを立て続けに発表、「アフリカ文学の父」と称されるようになる。また、ナイジェリア東部州の独立をめぐる内戦(ビアフラ戦争)ではビアフラの大使を務める。1972年に渡米し、多くの大学で教鞭を執る。1977年にはコンラッド『闇の奥』でのアフリカの描き方を批判して注目された。2013年3月死去。 |
[訳者] 粟飯原文子 Aihara Ayako |
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ロンドン大学東洋アフリカ研究学院博士課程。神奈川大学非常勤講師。アフリカ文学専攻。文学作品のほか、アフリカの音楽や映画の研究も行う。訳書に『褐色の世界史』(ヴィジャイ・プラシャド)、『ゲリラと森を行く』(アルンダティ・ロイ)がある。 |