本書でスピノザは、聖書のすべてを絶対的真理とする神学者たちを批判し、哲学と神学を分離し、思想・言論・表現の自由を確立しようとする。スピノザの政治哲学 の独創性と今日的意義を、画期的に読みやすい訳文と豊富な訳注、詳細な解説で読み解く。
「本書は、哲学する自由を認めても道徳心や国の平和は損なわれないどころではなく、むしろこの自由を踏みにじれば国の平和や道徳心も必ず損なわれてしまう、ということを示したさまざまな論考からできている」。現代において重要性を増す"危険な"思想家スピノザの神髄がここにある。
スピノザ Benedictus de Spinoz |
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[ 1632 - 1677 ] オランダ・アムステルダム生まれの哲学者。父母ともポルトガルから迫害を逃れてきたユダヤ人で、父はユダヤ人居住区で貿易商を営んでいた。父の死後弟と二人で家業を継ぐが、思想・宗教上の理由でユダヤ人共同体から破門を宣告され、経営権を弟に譲り隠居。以後、オランダ各地でつつましい生活を送りながら、独自の哲学を築き上げた。1670年、『神学・政治論』を匿名で刊行するが、数年後に禁書処分となる。晩年に完成した主著『エチカ』は、当局の監視が厳しく、刊行を断念。1677年、肺の持病のためハーグで死去。死後、友人たちの手で、『エチカ』をふくむ『遺稿集』が刊行された。 |
[訳者] 吉田量彦 Yoshida Kazuhiko |
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1971年茨城県水戸市生まれ。慶應義塾大学文学部、同大学院文学研究科を経て、ドイツ・ハンブルク大学にて学位取得(哲学博士)。17・18世紀の西洋近代哲学を専攻。著書に『理性と感情-スピノザの政治哲学』(ドイツ語、2004年)、『倫理学案内』(共著、2006年)、ほか論文多数。2011年より、東京国際大学商学部准教授。 |