数カ月続く不漁のために周囲から同情の視線を向けられながら、独りで舟を出し、獲物がかかるのを待つ老サンチャゴ。やがて巨大なカジキが仕掛けに食らいつき、三日にわたる壮絶な闘いが始まる……。決して屈服しない男の力強い姿と哀愁を描く、ヘミングウェイ文学の最高傑作。
従来この作品は、一種の活劇のように捉えられてきた。老人は獲物と格闘し、船上で叫び、大声で罵る。しかし作品本来の姿は、老人の内面のドラマを淡々と描いた、極めて思索的なものだ。原文に忠実な翻訳で浮かび上がる老人のこれまでとは異なる魅力に読者は魅了されるだろう。
アーネスト・ヘミングウェイ Ernest Hemingway |
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[ 1899 - 1961 ] アメリカの小説家。行動派の作家で、第一次世界大戦に赤十字の一員として従軍し、負傷する。その後、特派員として再び渡欧しスペイン内乱や第二次世界大戦にも従軍記者として関わり、その経験を元に『武器よさらば』『誰がために鐘は鳴る』を書き上げる。第二次世界大戦後はキューバに渡り、1952年に発表した『老人と海』でピューリッツアー賞を受賞。1954年にはノーベル文学賞を受賞する。晩年は健康と精神状態が悪化し、散弾銃で自殺。 |
[訳者] 小川高義 Ogawa Takayoshi |
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1956年生まれ。東京工業大学名誉教授。著書に『翻訳の秘密』。訳書に『低地』(ラヒリ)、『さゆり』(ゴールデン)、『骨』(フェイ・ミエン・イン)、『オリーヴ・キタリッジの生活』(ストラウト)、『老人と海』(ヘミングウェイ)、『緋文字』(ホーソーン)、『黒猫/モルグ街の殺人』(ポー)、『若者はみな悲しい』『グレート・ギャッツビー』(共にフィッツジェラルド)ほか多数。 |