この作品ほど誤解と中傷にさらされてきた作品はない。過激な性描写のみが話題にされ、ロレンスが描こうとした「生の喜び」というテーマは長い間忘れ去られてきた。登場人物たちの苦悩や絶望は、きわめて現代的であり、今を生きる我々にとって隣人と呼べる存在なのだ。
上流階級の令夫人であるコニーは、戦争で下半身不随となった夫の世話をしながら、生きる喜びのない日々を送っていた。そんなとき、屋敷の森番メラーズに心奪われ、逢瀬を重ねることになるが......。地位や立場を超えた愛に希望を見つけようとする男女を描いた至高の恋愛小説。
D・H・ロレンス |
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1885 -
1930 ]
イギリスの小説家。イギリス中部の小さな炭坑町イーストウッドで労働者階級の家に生まれる。幼少時から書物を愛し、大学に入ると本格的に詩や小説を書くようになる。ロンドン郊外で小学校教師を務める一方、文芸誌に詩と短篇が掲載されたのをきっかけにパウンド、ウェルズなどとも交流。最愛の母の死をきっかけに故郷に戻り、長篇『息子と恋人』を完成させる。その後、大学教授の妻であったドイツ人の女性と駆け落ちして結婚。小説『虹』が発禁処分となったり、スパイ容疑で居住地を退去させられたりという逆境にもめげず精力的に創作を続け『恋する女たち』『カンガルー』『翼ある蛇』などを発表。晩年、結核を患いつつも、1928年に『チャタレー夫人の恋人』を書き上げた。 |
[訳者] 木村政則 Kimura Masanori |
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1968年生まれ。英米文学翻訳家。専門は 20世紀イギリス小説。著書に『20世紀末イギリス小説 アポカリプスに向かって。訳書に『チャタレー夫人の恋人』(D・H・ ロレンス)、『マウントドレイゴ卿/パーティの前に』(モーム)、『あなたの自伝、お書きします』『ブロディ先生の青春』『寝ても覚めても夢』『バン、バン! はい死んだ」 (以上、ミュリエル・スパーク)などがある。 |