ホッブズは「万人の万人に対する闘争状態」こそ、人間の自然状態だと定義する。なぜそうなのか。そしてこの逆説をどう解消すれば平和が実現するのか。社会契約による主権国家の成立を理論づけた本書の第1部は、国家を構成する個々の人間をその本性から考察する。(全2巻)
社会契約説を唱え、近代国家論の原点であり、近代政治哲学の出発点である本書は、以降のさまざまな哲学者に大きな影響を与えてきた。ヒュームにスピノザ、社会契約論のロックやルソーはもちろん、現代ではハンナ・アーレントもそのうちの一人だ。まさに、現代に生きる古典の代表的存在と言えよう。
目次 |
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はじめに |
第一部 人間について |
第一章 感覚について |
第二章 イマジネーションについて |
第三章 イマジネーションの波及ないし連鎖について |
第四章 話す能力について |
第五章 推論および学問について |
第六章 意志的な行動の、心の中での始まり(通常の言い方では情動) その表現手段としての言葉について |
第七章 論理的思考の終わり、あるいは締めくくり |
第八章 一般に知力と呼ばれている各種能力とその不全 |
第九章 学術分野の分類について |
第十章 権力、価値、位階、毀誉、ふさわしさについて |
第十一章 行動様式の違いについて |
第十二章 宗教について |
第十三章 人類の自然状態―人類の幸不幸に関わるもの |
第十四章 第一、第二の自然法および契約について |
第十五章 その他の自然法について |
第十六章 人格、本人、人格化されたもの |
解説 角田安正 |
訳者あとがき |
トマス・ホッブズ Thomas Hobbes |
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[ 1588 - 1679 ] イギリスの哲学者・思想家。英国国教会牧師の二男として生まれる。幼い頃からラテン語とギリシャ語を学び、オックスフォード大学に入学。卒業後はキャヴェンディッシュ男爵の長男の家庭教師となり、ヨーロッパ外遊に随伴、見聞を広めると同時に、古典に目を開いた。帰国後、国内の政情不安のなか1640年に出した『法の原理』が議会派から厳しく非難され、同年末パリに亡命。約11年の滞在期間中の51年に『リヴァイアサン』を刊行した。カトリック教会を厳しく弾劾したため危険を感じ、フランスを離れてイングランドに帰国することを決意。母国に戻った後も逆境のなか執筆活動を続けた。他の著作に『市民論』『物体論』『人間論』などがある。 |
[訳者] 角田安正 Tsunoda Yasumasa |
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1958年生まれ。防衛大学校教授。ロシア地域研究専攻。在ロシア日本国大使館専門調査員を経て現職。訳書に『国家と革命』(レーニン)、『上からの革命−ソ連体制の終焉』(コッツほか)、『帝国主義論』(レーニン)、『菊と刀』(ベネディクト)、『市民政府論』(ロック)、共訳書に『ゴルバチョフ・ファクター』(ブラウン)などがある。 |