「存在(ある)」とは何を意味するのか?

存在と時間1

存在と時間1

ハイデガー    
中山 元  訳   

20世紀最大かつ最難関と言われる哲学書を、定評ある分かりやすい訳文と詳細な解説で攻略する。

内容

「存在(ある)」とは何を意味するのか? ギリシア以来の問いを「時間」において捉え、現象学的解釈によって解き明かそうとしたハイデガーの主著。1927年の刊行以来、哲学の領域を超えてさまざまな分野に大きな影響を与え続ける20世紀最大の書物。第1巻は序論第八節までを収録(全8巻)。


目次
存在と時間1
   
一九五三年、第七版への前書き    11
序論 存在の意味への問いの提示    15
  • 第一章 存在の問いの必然性、構造、優位    15
  • 第一節 存在への問いを明示的に反復することの必然性    15
  • 第二節 存在への問いの形式的な構造    29
  • 第三節 存在問題の存在論的な優位    48
  • 第四節 存在への問いの存在者的な優位    60
  • 第二章 存在への問いを遂行するための二重の課題。探求の方法とその構図    77
  • 第五節 現存在の存在論的な分析論——存在一般の意味を解釈するための地平を開拓する作業    77
  • 第六節 存在論の歴史の解体という課題    94
  • 第七節 探求の現象学的な方法    124
  • A 現象の概念    129
  • B ロゴスの概念    140
  • C 現象学の予備概念    150
  • 第八節 考察の概要    167
 解説 中山元
  
前書き——導入として  181
『存在と時間』の誕生まで/『存在と時間』のタイトルについて
序  190
序について(001)/エレアの客人の問い/存在をめぐる二つの問い/「意味」への問い/本書の目標と地平の概念/三つの課題と序論の構成(002)
序論 存在の意味への問いの提示  201
第一章 存在の問いの必然性、構造、優位  201
  • 第一節
  • 第二節
  • 第三節
  • 第四節

第一節 存在への問いを明示的に反復することの必然性   201
形而上学の問い(003)/巨人族の戦い/伝統的な存在論の批判/存在についてのドグマ(004)/ドグマを支える三つの先入観/古代の存在論についての三つの問い(005)/反復の概念について/第一の先入観(006)/類と種/カテゴリーの概念について/個別の述語としてのカテゴリーと最上位にある述語としてのカテゴリー/類比による統一/中世のスコラ哲学とヘーゲルにおける扱い/第二の先入観(007)/第三の先入観(008)/「平均的な分かりやすさ」/「存在了解」/「哲学者の仕事」(009)/本書の仕事(010)

第二節 存在への問いの形式的な構造  230
存在への問いの特別な性格(011)/問いの形式的な構造(012)/「問う」という動詞の複合語と問いの三つの契機/問いの三つの契機/存在への問いの特殊な性格/構造契機の二つの側面(013)/問いの地平(014)/存在了解の未規定性と問いの必然性(015)/序論と第一章と第二章の目的/伝統的な存在論の欠陥(016)/存在論的な差異(017)/ヴォラウフヒンの概念/おとぎ話/「誰」への問い(018)/存在の多様性/範例的な存在者とは誰か/現存在とは(019)/現存在の三つの側面/存在問題と循環論/循環論を否定する第一の根拠(020)/第二の根拠(021)/第三の根拠(022)/平均的な存在了解

第三節 存在問題の存在論的な優位  263
問題提起(023)/存在への問いの二つの動機(024)/この問いの意味と目的(025)/フッサールの基礎づけの理念/ハイデガーの「学問の進歩」の概念/危機の時代(026)/学問の危機の実例(027)/領域的な存在論(028)/カントの『純粋理性批判』の位置/二つの存在論(029)/領域的な存在論という用語について(030)/本来の存在論の優位(031)

第四節 存在への問いの存在者的な優位  285
現存在の存在者的な優位(032)/現存在の前存在論的な五つの特徴(033)/「前存在論的な」という概念(034)/実存について(035)/実存についての伝統的な哲学の用語との違い/固有の存在/存在の他動詞性/実存了解の二つの可能性(036)/決断の可能性/実存の問題と実存への問い/「実存的な」と「実存論的な」という概念/分析の可能性と必然性(037)/解釈の循環の問題/現存在分析の循環の問題/世界のうちに存在するものたち(038)/基礎存在論(039)/基礎存在論と現存在の優位(040)/存在論の実存的な「根」と実存論的な「根」(041)/古代と中世の存在論(042)/実存の問いと基礎存在論(043〜044)

第二章 存在への問いを遂行するための二重の課題。
探求の方法とその構図  318
  • 第五節
  • 第六節
  • 第七節
  • 第八節

第五節 現存在の存在論的な分析論——存在一般の意味を解釈するための地平を開拓する作業  318
第五節の課題(045)/近さと遠さ(046)/世界と「世界」/「世界」の四つの概念/存在論的な「反照」/反照と反省/現存在の優位の逆説(047)/解明が困難な理由(048)/現存在の実存論的な解釈(049)/実存論的な分析に必要なもの/現存在の分析論の二つの消極的な要件(050)/現存在の分析論の二つの積極的な要件/「わたし」の近さと遠さ/現存在の分析論の限界(051)/時間性の概念の意味(052)/伝統的な時間概念との対決(053)/伝統的な時間概念(054)/時間についての三つの問い/「存在と時間」(055)/時【とき】性の概念(056)/存在への問いの答えの三つの性格(057)/存在論の問いの歴史(058)

第六節 存在論の歴史の解体という課題  346
第六節の構成/諸学の位置と哲学の位置(059)/歴史性の概念/過去と未来の時間/歴史学の成立と欠如(060)/存在への問いと歴史性(061)/伝統のもつ力(062〜063)/存在への新たな問いの必要性(064)/存在への問いの隠蔽の歴史/哲学の「解体」の必要性(065)/解体と存在論(066)/解体の営みの限界(067)/解体作業の二つの問い(068)/カントの功績/カントの挫折(069)/デカルトの挫折(070)/デカルトの三つの欠陥/中世哲学の遺産(071)/二つの負の遺産/古代の存在論の遺産(072)/ロゴスと時間性の結びつき(073)/古代の存在論の欠陥(074)/近代の時間論の限界(075〜076)/存在論の解体と「反復」の課題(077)/存在への問いに向かって(078)

第七節 探求の現象学的な方法  383
存在論の方法(079)/領域的な存在論の否定(080)/ハイデガーに固有の現象学の方法(081)/事象そのものへ!(082)/現象学という語の由来(083)

A 現象の概念  389
現象の語について(084)/現象と存在/現象と仮象の関連と差異/みずからを示さないものとしての〈現れ〉(085)/〈現れ〉の語義の混乱(086〜088)/現れが仮象である場合(089)/現象、現れ、仮象、たんなる現れ(090)/現象の二つの概念(091)/「学」への問い(092)
B ロゴスの概念  404
ハイデガーのロゴス論/アリストテレスのロゴスによる人間の定義/語りを考察するための二つの用語(093)/「デールーン」と「アポファイネスタイ」(094)/アリストテレスのアポファイネスタイ(095)/総合の役割(096)/あらわにすることとしての真理(097)/真理の場所(098)/真理の場所としてのアイステーシス/ノエインの概念について/総括(099)/ロゴスの多様な概念(100)/ロゴスとアポファンシス(101)
C 現象学の予備概念  424
現象学の概念の形式的な意味(102)/記述の概念について(103)/現象学のテーマ(104)/三つの隠蔽状態(105〜109)/存在の隠蔽のもつ危険性/隠蔽状態の必然性/現象学の方法論の三つの要素(110)/「現象的な」と「現象学的な」の概念の違い(111〜112)/現象学の方法としての解釈学(113)/超越概念と超越論的な概念(114)/存在論と現象学の違い(115)/フッサールへの謝辞(116)

第八節 考察の概要  449
存在の意味の問いの性格(118)/本書の構成(119〜123)

 訳者あとがき
マルティン・ハイデガー    Martin Heidegger
[ 1889 - 1976 ]    ドイツの哲学者。フライブルク大学で哲学を学び、フッサールの現象学に大きな影響を受ける。1923年マールブルク大学教授となり、1927年本書『存在と時間』を刊行。当時の哲学界に大きな衝撃を与えた。翌1928年フライブルク大学に戻り、フッサール後任の正教授となる。ナチス台頭期の1933年に学長に選任されるも1年で辞職。この時期の学長としての活動が、第二次大戦直後から多くの批判をうける。大戦後は一時的に教授活動を禁止された。1951年に復職、その後86歳で死去するまで旺盛な活動を続けた。
[訳者] 中山 元    Nakayama Gen
1949年生まれ。哲学者、翻訳家。主著に『思考のトポス』『フーコー入門』『はじめて読むフーコー』『思考の用語辞典』『賢者と羊飼い』『フーコー 生権力と統治性』『フーコー 思考の考古学』ほか。訳書に『自我論集』『エロス論集』『幻想の未来/文化への不満』『人はなぜ戦争をするのか』(以上、フロイト)、『パピエ・マシン(上・下)』(デリダ)、『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』『純粋理性批判』(カント)、『人間不平等起源論』『社会契約論/ジュネーヴ草稿』(共にルソー)、『職業としての政治 職業としての学問』『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(共にウェーバー)、『善悪の彼岸』『道徳の系譜学』(共にニーチェ)、『存在と時間』(ハイデガー)ほか多数。