楽園のような美しい故郷を追放されてしまった、まっすぐな心と純朴な気質をもつ"純真な"若者カンディード。恩師パングロスの説く「最善説」の教えを胸に、大地震、戦乱、盗賊や海賊の襲撃など、度重なる災難に立ち向かい、そして最後の最後、ついに一つの真実を見つけるのだが......。
18世紀啓蒙作家ヴォルテールの代表作。「最善説」についてヴォルテール自身が疑念を抱くきっかけとなり、つづくいくつもの議論の土台になった「リスボン震災に寄せる詩」を本邦初の完全訳で収録。
「ヴォルテールの『カンディード』は、抑圧的な時代における楽しいあらがい方をわれわれに教えてくれている。どんな時代でも、皮肉や冗談が言えるなら、生きていることそれ自体を何となく意味ありげなものにしていけそうな気がする。 したがって、われわれは『カンディード』を読むとき、それを大思想家の代表作としてではなく、かれが余興として短期間で書き上げたコントとして読むのがよい。その軽さ、軽やかさ、軽薄さを楽しむのがよい。」
渡名喜庸哲(慶応義塾大学専任講師)
ヴォルテール Voltaire |
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[ 1694 - 1778 ] フランスの思想家・作家。パリに生まれる。早くから創作を志し、処女作『エディップ(オイディプス)』(1718年)がコメディー・フランセーズで大成功を収める。決闘騒動でバスティーユに投獄された後、イギリスに亡命。この時の見聞をもとに当時のフランス社会を批判した『哲学書簡』(34年)を刊行するも、即発禁処分となる。「リスボン大震災に寄せる詩」へのルソーの痛烈な書簡は有名である。61年に起こったフランスのプロテスタントに対する冤罪事件(カラス事件)に憤慨し、『寛容論』を発表。劇作も多数発表する一方で、プロイセンのフリードリヒⅡ 世からの招聘をうけるなど、思想・信教・表現の自由や寛容を唱える知識人として、その 影響力はヨーロッパ全域に及んだ。 |
[訳者] 斉藤悦則 Saito Yoshinori |
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1947年生まれ。元鹿児島県立短期大学教員。共編著に『ブルデュー社会学への挑戦』。訳書に『プルードンの社会学』(アンサール)、『人口論』(マルサス)、『自由論』(ミル)、『カンディード』『寛容論』(ヴォルテール)、『貧困の哲学』(プルードン)。共訳書に『出る杭は打たれる』(レノレ)、『構成的権力』(ネグリ)、『システムの解体』(シャバンス)、『逆転の思考』(コリア)など。 |