生きがいのない若者、群れた人間の怖さ、現在の自己に乗り移る過去の経験など、人間や社会の永遠の相をつらぬく洞察が、今でも新鮮な映画的技法とともに、この小説には凝縮された形で詰まっているといえる。(略)我々日本人にとって、ディケンズの世紀がいま始まろうとしている。(「解説」より)
ルーシーと結ばれロンドンで幸せな家庭を築いたダーネイだが、元の使用人を救うべくパリに舞い戻るや、血に飢えた革命勢力に逮捕されてしまう。彼の窮地を救うため、弁護士カートンは恐るべき決断を下す......。時代のうねりの中で愛と信念を貫く男女を描いた、ディケンズ文学の真骨頂。
山本史郎(東京大学総合文化研究科教授)
チャールズ・ディケンズ Charles Dickens |
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[ 1812 - 1870 ] イギリスの作家。親が借金を抱え、ロンドンのスラム街で少年時代を過ごす。法律事務所の使い走り、速記者などをしながら大英博物館に通って勉強し、新聞記者になる。ジャーナリストの目で社会を凝視した作品は大衆に歓迎された。『クリスマス・キャロル』『二都物語』『オリバー・ツイスト』『デヴィッド・カッパーフィールド』など。 |
[訳者] 池 央耿 Ike Hiroaki |
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1940年生まれ。翻訳家。訳書に『クリスマス・キャロル』(ディケンズ)、『南仏プロヴァンスの12か月』(メイル)、『新・人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』(フルガム)、『アバラット』(バーカー)、『パイド・パイパー』(シュート)、『キーパー』(ピート)、『失われた地平線』(ヒルトン)、『ガーネット傑作集』、『タイムマシン』(ウェルズ)、『ヘンリー・ライクロフトの私記』(ギッシング)、『二都物語』(ディケンズ)ほか多数。 |