これまで「アクション」によって成立していた 小説世界に「内面描写」をもちこみ、さらに、その内面には、「感情」と「理性」の葛藤が存在することをラファイエット夫人は時代に先駆け、描き出して見せた。これこそが心理小説の誕生である。(訳者)
フランス宮廷に完璧な美を備えた女性が現れた。彼女は恋を知らぬままクレーヴ公の求婚に応じ人妻となるが、舞踏会で出会った輝くばかりの貴公子に心ときめく。夫への敬愛、初めて知った恋心。葛藤の日々に耐えられなくなった夫人は、あろうことかその恋心を夫に告白してしまう......。
ラファイエット夫人 Madame de Lafayette |
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[ 1634 - 1693 ] マリ=マドレーヌ・ピオシュ・ド・ラ・ヴェルニュとして、フランスのパリに生まれる。父は宮廷の技術官、母は宮廷医官の娘で公爵夫人の侍女。ラテン語、イタリア語、古典文学を学び、自身も宮廷に身をおき、21歳のときラファイエット伯爵と結婚する。最初の作品『モンパンシエ侯爵夫人』が好評で、その後『ザイード』『クレーヴの奥方』を刊行(いずれも無署名)。『タンド公爵夫人』も匿名だったが、『アンリエット・ダングルテールの記録』からは著者名をラファイエット夫人とする。古典の名作と謳われ、日本の戦後文学にも大きな影響を与えた本作は、1780年から夫人の名が明記された。 |
[訳者] 永田千奈 Nagata China |
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東京生まれ。翻訳家。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒。主な訳書に『海に住む少女』『ひとさらい』(シュペルヴィエル)、『女の一生』(モーパッサン)、『孤独な散歩者の夢想』(ルソー)、『クレーヴの奥方』 (ラファイエット夫人)、『椿姫』 (デュマ・フィス)、『ある父親』(シビル・ラカン)、『それでも私は腐敗と闘う』(イングリッド・ベタンクール)、『サーカスの犬』(リュドヴィック・ルーボディ)、『印象派のミューズ』(ドミニク・ボナ)などがある。 |
書評 | |
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2020.11.07 東京新聞 | 「公開選書 あなたに贈る本」(辻山良雄さん) |