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存在と時間2

存在と時間2

ハイデガー    
中山 元  訳   

内容

20世紀最大の哲学書と言われる『存在と時間』。本書は『純粋理性批判』(カント)など、哲学書翻訳で定評のある訳者による詳細な解説を併録することで、分かりやすい訳文が、よりいっそう理解できる構成となっている。

現存在とは「みずからおのれの存在へとかかわっている」存在者であること、つまり現存在は実存する。この第二分冊では、その実存の概念として「そのつどわたし」である各私性、平均的な日常性の概念が提起され、現存在の基本的な構造が「世界内存在」であることが詳細に考察される(全8巻)。


目次
存在と時間2
     
第一部 時間性に基づいた現存在の解釈と、存在への問いの超越論的な地平としての時間の解明    11
第一篇 現存在の予備的な基礎分析    11
  • 第一章 現存在の予備的な分析の課題の提示    13
  • 第九節 現存在の分析論の主題    13
  • 第一〇節 人間学、心理学、生物学と異なる現存在の分析論の領域の確定    30
  • 第一一節 実存論的な分析論と未開な段階にある現存在の解釈、「自然的な世界概念」を獲得することの難しさ    49
  • 第二章 現存在の根本機構としての世界内存在一般    56
  • 第一二節 内存在そのものに基づいた世界内存在の素描    56
  • 第一三節 基礎づけられた様態による内存在の例示。世界認識    82
  • 第三章 世界の世界性    94
  • 第一四節 世界一般の世界性という理念    94
  • A 環境世界性と世界性一般の分析    109
  • 第一五節 環境世界において出会う存在者の存在    109
  • 第一六節 世界内部的な存在者においてみずからを告示する環境世界の世界適合性    131
 解説 中山元
 
第一部 時間性に基づいた現存在の解釈と、存在への問いの超越論的な地平としての時間の解明  153
第一篇 現存在の予備的な基礎分析  153
第一篇の構成(124)
第一章 現存在の予備的な分析の課題の提示  157
  • 第九節
  • 第一〇節
  • 第一一節

第九節 現存在の分析論の主題  157
そのつどわたしの存在(125)/二つの存在様態(126)/エクシステンティア(127)/各私性(128)/サルトルとの論争/本来性と非本来性(129)/本来性における価値評価の側面/キルケゴールの『死にいたる病』との類似/現存在分析の課題(130〜131)/〈差異のなさ〉の意味/頽落の積極的な意味/学の端緒/現存在分析の基本的な条件(135)/フォアの構造/平均性と日常性(131〜134)/実存カテゴリー(135)/アプリオリ性(135〜136)

第一〇節 人間学、心理学、生物学と異なる現存在の分析論の領域の確定  193
実存論的な分析と諸科学の領域(137)/デカルトのコギトと自我(138)/三つの連結点——主観、生の哲学、人格の概念の批判/近代哲学の主体の概念の批判——第一の連結点(139)/生の哲学の批判——第二の連結点(140〜141)/「生の哲学」の同義反復について(140)/人格概念の批判——第三の連結点(141〜142)/シェーラーの人格概念/「意識の物化」批判(142)/伝統的な人間学の二つの要素(143〜145)/近代哲学の継承(145)/心理学と生物学(146)/基礎づけの学としての存在論(147)/アプリオリの概念

第一一節 実存論的な分析論と未開な段階にある現存在の解釈、「自然的な世界概念」を獲得することの難しさ  228
人類学のもつ意味(148〜151)/ハイデガーの批判(148)/カッシーラー批判(150)

第二章 現存在の根本機構としての世界内存在一般  237
  • 第一二節
  • 第一三節

第一二節 内存在そのものに基づいた世界内存在の素描  237
現存在の存在様式の四つの特徴(152)/世界内存在の概念の三つの構造契機(153〜157)/基礎存在論と時間性の分析/カテゴリーと実存カテゴリー(158)/カテゴリーとしての「内部性」/実存カテゴリーとしての「内存在」(159〜161)/「ふれあう」こと(161)/カテゴリーとしての内部性と実存カテゴリーとしての内存在/カテゴリーとしての「実際のありかた」と実存カテゴリーとしての「事実性」(161)/初期ハイデガーの「事実性」の概念について/近代哲学の伝統と存在論(162)/配慮的な気遣い(163)/環境世界の概念(165)/欠如に注目する方法(165)/世界を誤解する理由(166〜168)

第一三節 基礎づけられた様態についての内存在の例示。世界認識  274
世界認識における主観と客観のモデルと三つの誤謬(169)/認識論的な誤謬/存在論的な差異を無視する誤謬/主観・客観論の陥穽の誤謬(167)/カタツムリ・モデル/伝統的な認識論のもたらす三つの難問/第一の難問(170〜171)/第二の難問(172)/第三の難問(173)/カタツムリ・モデルの限界(174)

第三章 世界の世界性  288
  • 第一四節
  • 第一五節
  • 第一六節

第一四節 世界一般の世界性という理念  288
世界を考察するための第一の視点(175〜179)/世界を考察するための第二の視点(180〜185)/「世界性」と「世界的」の概念(186〜187)/伝統的な哲学の方法の欠陥(188〜190)/考察方法の逆転/第三章の構成(191)

第一五節 環境世界において出会う存在者の存在  299
環境世界の「環」の意味としてのウム(192)/哲学の伝統的な見方の問題点(193〜194)/道具としての事物(195)/「道具性」とは(196)/プラグマタとの関係/〈道具〉の概念(196)/道具性の三つの特徴(195〜197)/手元存在性/手元存在者と眼前存在者(198〜199)/指示連関の三つの契機/指示の第一の契機——用途(200)/指示の第二の契機——自然(201)/「自然」の概念の二重性(202)/指示の第三の契機——現存在の存在様式(203)/手元存在者における自然の位置(203)/基礎づけの機能とあらわにする機能(204)/道具的な世界と科学的な世界(205)

第一六節 世界内部的な存在者においてみずからを告示する環境世界の世界適合性  340
世界適合性を喪失した道具(206〜208)/「欠如」という方法/「目立つこと」——第一の欠如の存在様態(208)/「催促がましさ」——第二の欠如の存在様態(209)/邪魔になるもの——第三の欠如の存在様態(210)/三つの欠如の存在様態の相互的な関連(211〜214)/道具の手元存在性の「存在論的な」と「カテゴリー的な」の用語/道具の「 そのもの性 アンジヒ 」/世界の意味/世界の閃き/道具連関の世界の五つの特徴(215〜219)

 訳者あとがき
マルティン・ハイデガー    Martin Heidegger
[ 1889 - 1976 ]    ドイツの哲学者。フライブルク大学で哲学を学び、フッサールの現象学に大きな影響を受ける。1923年マールブルク大学教授となり、1927年本書『存在と時間』を刊行。当時の哲学界に大きな衝撃を与えた。翌1928年フライブルク大学に戻り、フッサール後任の正教授となる。ナチス台頭期の1933年に学長に選任されるも1年で辞職。この時期の学長としての活動が、第二次大戦直後から多くの批判をうける。大戦後は一時的に教授活動を禁止された。1951年に復職、その後86歳で死去するまで旺盛な活動を続けた。
[訳者] 中山 元    Nakayama Gen
1949年生まれ。哲学者、翻訳家。主著に『思考のトポス』『フーコー入門』『はじめて読むフーコー』『思考の用語辞典』『賢者と羊飼い』『フーコー 生権力と統治性』『フーコー 思考の考古学』ほか。訳書に『自我論集』『エロス論集』『幻想の未来/文化への不満』『人はなぜ戦争をするのか』(以上、フロイト)、『パピエ・マシン(上・下)』(デリダ)、『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』『純粋理性批判』(カント)、『人間不平等起源論』『社会契約論/ジュネーヴ草稿』(共にルソー)、『職業としての政治 職業としての学問』『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(共にウェーバー)、『善悪の彼岸』『道徳の系譜学』(共にニーチェ)、『存在と時間』(ハイデガー)ほか多数。