同性愛者で泥棒であった作家ジュネ。「サルトルのジュネロン(中略)によって、ジュネはあたかも<実存主義的な聖人>であるかのように聖化されてしまった」(解説)。だが、精密な読みに基づくこの新訳により、まったく新しいジュネ像が見えてくる!
監獄と少年院を舞台に、アルカモーヌ、ビュルカン、ディヴェールら「薔薇」に譬えられる美しい囚人たちとジュネ自身をめぐる、暴力と肉体の物語。同性愛者であり泥棒でもあった作家が、悪と性に彩られた監獄世界を緻密かつ幻想的に描くことで、そこに聖性を発見していく驚異の書。新しいジュネ像の誕生!
ジャン・ジュネ Jean Genet |
---|
[ 1910 - 1986 ] フランスの作家、詩人。1910年パリに生まれる。未婚の母親はガブリエル・ジュネ、父親は不詳。生後数カ月で母親に捨てられ里親のもとで育つ。10歳のころから始まった盗癖で何度も施設に入れられ、脱走と逮捕を繰り返す。18歳で軍隊に入るが25歳で脱走、ヨーロッパを放浪する。'37年、パリに戻るが、またも窃盗そして逮捕を繰り返す。'42年、刑務所内で『花のノートルダム』を書き始め、'43年に出会ったジャン・コクトーがその才能に驚き、翌'44年、同作が文芸誌に掲載されデビュー。主な作品に『薔薇の奇蹟』『ブレストの乱暴者』『葬儀』『泥棒日記』などがある。 |
[訳者] 宇野邦一 Uno Kuniichi |
---|
フランス文学者、批評家。1948年島根県生まれ。京都大学文学部仏文科卒業。パリ第8大学でジル・ドゥルーズの指導をうけ、アントナン・アルトーについての研究で1980年博士号取得。文学、思想のほか、演劇、ダンスなどについて幅広い批評活動を行う。著書に『意味の果てへの旅』『反歴史論』『ジャン・ジュネ―身振りと内在平面』『〈兆候〉の哲学―思想のモチーフ26』など多数。訳書に『フーコー』(ドゥルーズ)、『アンチ・オイディプス』(ドゥルーズ/ガタリ)、『判決』(ジュネ)など多数。 |