20世紀最大の哲学書を読破する

存在と時間3

存在と時間3

ハイデガー    
中山 元  訳   

デカルトの存在論の誤謬を批判し、カントを乗り越えるユニークな思想。

内容

第3巻はデカルトの存在論の誤謬を批判し、世界内存在としての現存在の空間性と手元存在者の空間性との関係から、世界の世界性を考察する。また、「共同現存在」「世人(ひと)」などの概念から現存在とは誰なのか、他者とは誰なのか、という実存論的な問いを考える。(第1篇第27節まで)


目次
存在と時間3
  
第一部 時間性に基づいた現存在の解釈と、存在への問いの超越論的な地平としての時間の解明    11
第一篇 現存在の予備的な基礎分析    11
  • 第三章 世界の世界性    11
  • 第一七節 指示とめじるし    11
  • 第一八節 適材適所性と有意義性、世界の世界性    33
  • B 世界性の分析とデカルトによる世界の解釈の対比    57
  • 第一九節 広がりのあるものレス・エクステンサとしての「世界」の規定    60
  • 第二〇節 「世界」の存在論的な規定の基礎    68
  • 第二一節 「世界」についてのデカルトの存在論の解釈学的な考察    78
  • C 環境世界の〈まわり性〉と現存在の「空間性」    102
  • 第二二節 世界内部的な手元存在者の空間性    104
  • 第二三節 世界内存在の空間性    114
  • 第二四節 現存在の空間性と空間    134
  •  
  • 第四章 共同存在と自己存在としての世界内存在、「世人ひと」   146
  • 第二五節 現存在とは〈誰なのか〉を問う実存論的な問いの端緒    148
  • 第二六節 他者の共同現存在と日常的な共同存在    160
  • 第二七節 日常的な自己存在と〈世人ひと〉    191
 解説 中山元
第一部第一篇
第三章 世界の世界性  216
  • 第一七節
  • 第一八節
  • 第一九節
  • 第二〇節
  • 第二一節
  • 第二二節
  • 第二三節
  • 第二四節

第一七節 指示とめじるし  216
この節の課題(221)/〈めじるし〉の考察の意図/指示するための〈めじるし〉(222〜223)/関係づけの概念について(224)/類と種の関係/形式化の方法/〈めじるし〉の形式化/道具連関の指示構造(225)/方向指示器の表示機能(226)/〈めじるし〉という道具の存在論的な意味(227)/〈めじるし〉の時間性格(228〜229)/〈めじるし〉の三つの特徴(229)/〈めじるし〉を定めること(230)/〈めじるし〉の発見(231〜232)/〈めじるし〉の作成——ハンカチの結び目(233)/フェティシズムと〈めじるし〉の違い(234)/〈めじるし〉と指示の三つの関係(235)

第一八節 適材適所性と有意義性、世界の世界性  248
用語の整理(236)/適材適所性と目的連関(237)/ヴォルムヴィレン(238)/「開けわたされること」(239)/「露呈」させるということ(240〜241)/アプリオリ的な完了(240)/二つの問いの確認/世界の世界性(242〜245)/ヴォラウフヒン(242〜243)/ヴォラウフヒンの使用例/ヴォラウフヒンの構造/イデアとヴォラウフヒン/意義を示す働き(246)/現存在の世界への依存/有意義性と言語(247〜248)/B項の役割/三つの存在様式(250)/二つの疑問(249)/ハイデガーの回答(250)

B 世界性の分析とデカルトによる世界の解釈の対比  285
 
この項の構成(252〜253)

第一九節 広がりのあるものレス・エクステンサとしての「世界」の規定  287
デカルトの実体論(254〜257)/「広がり」の概念の特徴

第二〇節 「世界」の存在論的な規定の基礎  291
存在の概念の二義性(258〜259)/デカルトの「実体」概念の問題性(259〜261)

第二一節 「世界」についてのデカルトの存在論の解釈学的な考察  296
デカルトの問題構成の不適切さ(262)/デカルトと自然科学(263)/デカルト哲学のもたらした三つの帰結(264〜270)/新たな課題(271〜275)/四つの具体的な課題(276〜283)/価値哲学の欠陥(273)/C項へ

C 環境世界の〈まわり性〉と現存在の「空間性」  313
環境世界の〈まわり性〉と現存在の「空間性」についての考察の構造(284)

第二二節 世界内部的な手元存在者の空間性  315
手元存在者の存在(285)/手元存在者の空間性(286〜287)/手元存在者としての自然物/道具としての太陽(288)/住宅の間取りと方位(288)/現存在の空間性(289)

第二三節 世界内存在の空間性  325
現存在の空間性の二つの特徴(290)/距離を取ること(291〜294)/遠さと近さ(295)/手元存在者と眼前存在者の空間性(295〜297)/〈方向づけ〉(298)/太陽の位置と方角/左右と東西(299)/暗闇の部屋の実例(300〜302)/主観の絶対性と二つの主体モデル/灯台モデル/反照モデル/反照モデルの存在論的な意味/アプリオリの概念

第二四節 現存在の空間性と空間  351
現存在の空間性(303〜304)/道具の空間性——「場を空けること」(305)/空間の誕生(306〜311)/カントの空間論への批判(306)

第四章 共同存在と自己存在としての世界内存在、「世人ひと」  361

第四章の構成とねらい(312)

  • 第二五節
  • 第二六節
  • 第二七節

第二五節 現存在とは〈誰なのか〉を問う実存論的な問いの端緒  362
形式的な告示(313)/現存在は「そのつどわたし自身」であるという規定への疑問(314〜315)/二つの方法論的な疑念(316)/現存在の考察の二つの道(317〜321)

第二六節 他者の共同現存在と日常的な共同存在  370
共同現存在(322〜325)/フッサールの他者論批判(326〜328)/孤独論(329)/顧慮的な気遣い(330)/共同世界と共同存在/共同存在と共同現存在(329)/共同相互存在(334〜335)/顧慮的な気遣いの二つの極端な形式(332〜334)/顧慮に特有の二つのまなざし(336)/目的としての他者(337〜338)/他者を知ること(339〜340)/感情移入論の再批判(341〜345)/感情移入論の失敗/感情移入論の生まれる根拠(346)/間主観性の理論の批判

第二七節 日常的な自己存在と〈世人ひと  401
欲望の主体(347)/他者との関係のうちで生まれる欲望(347〜348)/他者への欲望/他者との「違いをつけようとすること」における三つの動機/世人ひと(349)/「隔たり」と「疎遠さ」(350)/現存在の日常性の存在様式/平均性と均等性(351)/世人ひとの支配のプロセスと均等化/公共性(352)/存在免責(353〜355)/迎合/不断性(356)/実在的な主体としての世人ひと(357〜359)/自己の喪失(360)/「自己の喪失」の概念/三つの重要な帰結(360〜362)/新たな課題(363〜364)

 訳者あとがき
マルティン・ハイデガー    Martin Heidegger
[ 1889 - 1976 ]    ドイツの哲学者。フライブルク大学で哲学を学び、フッサールの現象学に大きな影響を受ける。1923年マールブルク大学教授となり、1927年本書『存在と時間』を刊行。当時の哲学界に大きな衝撃を与えた。翌1928年フライブルク大学に戻り、フッサール後任の正教授となる。ナチス台頭期の1933年に学長に選任されるも1年で辞職。この時期の学長としての活動が、第二次大戦直後から多くの批判をうける。大戦後は一時的に教授活動を禁止された。1951年に復職、その後86歳で死去するまで旺盛な活動を続けた。
[訳者] 中山 元    Nakayama Gen
1949年生まれ。哲学者、翻訳家。主著に『思考のトポス』『フーコー入門』『はじめて読むフーコー』『思考の用語辞典』『賢者と羊飼い』『フーコー 生権力と統治性』『フーコー 思考の考古学』ほか。訳書に『自我論集』『エロス論集』『幻想の未来/文化への不満』『人はなぜ戦争をするのか』(以上、フロイト)、『パピエ・マシン(上・下)』(デリダ)、『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』『純粋理性批判』(カント)、『人間不平等起源論』『社会契約論/ジュネーヴ草稿』(共にルソー)、『職業としての政治 職業としての学問』『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(共にウェーバー)、『善悪の彼岸』『道徳の系譜学』(共にニーチェ)、『存在と時間』(ハイデガー)ほか多数。