「完全に美しい人」ムイシキン公爵をめぐる恋のさや当てが熱を帯びるなか、人々のあいだに微妙な亀裂が深まる。聖なる美しさが、それに憧れる人々の気持ちと裏腹に、憶測や疑念を呼びはじめるのである。(解説より)
聖なる愚者ムイシキン公爵と友人ロゴージン、美女ナスターシヤ、美少女アグラーヤ......。はたして誰が誰を本当に愛しているのか? 謎に満ちた複雑な恋愛模様は形を変えはじめ、やがてアグラーヤからの1通の手紙が侯爵の心を揺り動かす。「イッポリートの告白」を含む物語の中核部分、登場。
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー Ф. М. Достоевский |
---|
[ 1821 - 1881 ] ロシア帝政末期の作家。60年の生涯のうちに、以下のような巨大な作品群を残した。『貧しき人々』『死の家の記録』『虐げられた人々』『地下室の手記』『罪と罰』『賭博者』『白痴』『悪霊』『永遠の夫』『未成年』そして『カラマーゾフの兄弟』。キリストを理想としながら、神か革命かの根元的な問いに引き裂かれ、ついに生命そのものへの信仰に至る。日本を含む世界の文学に、空前絶後の影響を与えた。 |
[訳者] 亀山郁夫 Kameyama Ikuo |
---|
1949年生まれ。名古屋外国語大学学長。東京外国語大学名誉教授。ドストエフスキー関連の研究のほか、ソ連・スターリン体制下の政治と芸術の関係をめぐる多くの著作がある。著書に『新カラマーゾフの兄弟』『謎とき「悪霊」』『磔のロシア』『熱狂とユーフォリア』『ドストエフスキー父殺しの文学』『「悪霊」神になりたかった男』『大審問官スターリン』『ドストエフスキー 共苦する力』ほか多数。訳書に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『白痴』『賭博者』(以上、ドストエフスキー)ほか。 |