「人は幸福になるために生きている」という考えは人間生来の迷妄であると断じる幸福論。自分を他人と比較し、他人の評価をたえず気にすることが不幸の元凶であり、名誉、地位、財産、他人の評価に惑わされず、自分自身が本来そなえているものを育むことが幸せへの第一の鍵である説く。
内容つらいとき、悲しいとき、人間関係に悩んだとき、失意のどん底にあるとき、現実世界がまさに最悪であるとき、生きのびる力を与えてくれる言葉、本当にそうだねと頷き、一服の清涼剤となるような言葉を本書に見出して頂ければ幸いである。(訳者)
アルトゥール・ショーペンハウアー Arthur Schopenhauer |
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[ 1788 - 1860 ] ダンツィヒ生まれのドイツの哲学者。「生の哲学」の祖。主意主義とペシミズムの代表者。ゲッティンゲン大学で自然科学・歴史・哲学を学び、プラトンとカント、インド哲学を研究する。イェーナ大学で論文「充足理由律の四根について」によりドクトルの学位取得後、1820年ベルリン大学講師となったが、当時ヘーゲル哲学が全ドイツを席巻、人気絶頂のヘーゲル正教授に圧倒され辞任し、在野の学者となる。主著である『意志と表象としての世界』(1819-1844)を敷衍したエッセイ『余録と補遺』(1851)がベストセラーになると、彼の思想全体も一躍注目を集め、晩年になってから名声を博した。フランクフルトにて没。ニーチェやヴァーグナーをはじめ、哲学・文学・芸術の分野で後世に大きな影響をおよぼした。 |
[訳者] 鈴木芳子 Suzuki Yoshiko |
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1987年、早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。翻訳家・ドイツ文学者。訳書に『読書について』『幸福について』(共にショーペンハウアー)、『イタリア紀行』(ゲーテ)、『宮廷画家ゴヤ』 (フォイヒトヴァンガー)、『ダダ大全』(ヒュルゼンベック編著)、『醜の美学』(ローゼンクランツ)、『ベビュカン』『二十世紀の芸術』(共にカール・アインシュタイン) ほか多数。共著に『私が本からもらったもの 翻訳者の読書論』。 |