『リヴァイアサン』第2部で展開されるホッブズの国家論は、国家権力(主権者)の絶対性を説いたものだが、自然法という概念を通してみることで、それは専制の擁護としてではなく、むしろジャン=ジャック・ルソーに代表される人民主権論の先駆けとして位置づけられるべきものだろう。(解説より)
人間の性質そのものについて考察した第1部を受けて、第2部「国家について」では、なぜ、どのようにして国家が成立したのかが論じられる。また国家主権の絶対性について、主権者と臣民との関係、臣民の自由についても、公民法や刑罰の観点からさまざまに考察される。
目次 |
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第二部 国家について |
第十七章 国家の大義、生成、定義 |
第十八章 「制定による主権者」の権利 |
第十九章 体制による国家の種別と、主権の継承 |
第二十章 父権的支配と専制的支配 |
第二十一章 臣民の自由について |
第二十二章 国家に従属する集団、公的な集団、私的な集団 |
第二十三章 主権者に仕えて国政を代行する者 |
第二十四章 国家の栄養摂取および増殖 |
第二十五章 助言について |
第二十六章 公民法について |
第二十七章 犯罪について。罪の減免について |
第二十八章 刑罰と報奨 |
第二十九章 国家を弱体化させ、解体へと導く要因について |
第三十章 主権を持つ代表者の責務について |
第三十一章 自然の理にもとづく神の王国について |
総括と結論 |
解説 角田安正 |
年譜 |
訳者あとがき |
トマス・ホッブズ Thomas Hobbes |
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[ 1588 - 1679 ] イギリスの哲学者・思想家。英国国教会牧師の二男として生まれる。幼い頃からラテン語とギリシャ語を学び、オックスフォード大学に入学。卒業後はキャヴェンディッシュ男爵の長男の家庭教師となり、ヨーロッパ外遊に随伴、見聞を広めると同時に、古典に目を開いた。帰国後、国内の政情不安のなか1640年に出した『法の原理』が議会派から厳しく非難され、同年末パリに亡命。約11年の滞在期間中の51年に『リヴァイアサン』を刊行した。カトリック教会を厳しく弾劾したため危険を感じ、フランスを離れてイングランドに帰国することを決意。母国に戻った後も逆境のなか執筆活動を続けた。他の著作に『市民論』『物体論』『人間論』などがある。 |
[訳者] 角田安正 Tsunoda Yasumasa |
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1958年生まれ。防衛大学校教授。ロシア地域研究専攻。在ロシア日本国大使館専門調査員を経て現職。訳書に『国家と革命』(レーニン)、『上からの革命−ソ連体制の終焉』(コッツほか)、『帝国主義論』(レーニン)、『菊と刀』(ベネディクト)、『市民政府論』(ロック)、共訳書に『ゴルバチョフ・ファクター』(ブラウン)などがある。 |