現存在の「頽落(たいらく)」とはなにか?

存在と時間4

存在と時間4

ハイデガー    
中山 元  訳   

わたしたちの〈気分〉を哲学する画期的な思想

内容

第4巻では、現存在の世界内存在のありかたそのものを「内存在」という観点から考察する。すなわち、現存在が世界においてどのように実存しているかを情態性、理解、語りという契機から分析し、さらに日常性においていかに頽落しているかを批判的に考察する。(第5章第38節まで)


目次
存在と時間4
  
第一部 時間性に基づいた現存在の解釈と、存在への問いの超越論的な地平としての時間の解明    11
第一篇 現存在の予備的な基礎分析    11
  • 第五章 内存在そのもの    11
  • 第二八節 内存在を主題とした分析の課題    11
  • A 〈そこに現にダー〉の実存論的な構成    24
  • 第二九節 情態性としての現‐存在    24
  • 第三〇節 情態性の一つの様態としての恐れ    47
  • 第三一節 理解としての現‐存在    56
  • 第三二節 理解と解釈    79
  • 第三三節 解釈の派生的な様態としての言明    97
  • 第三四節 現‐存在と語り。言語    120
  • B 〈そこに現にダー〉の日常的な存在と現存在の頽落    142
  • 第三五節 世間話    144
  • 第三六節 好奇心    154
  • 第三七節 曖昧さ    163
  • 第三八節 頽落と被投性    171
 解説 中山元
 
第一部第一篇
第五章 内存在そのもの  196
  • 第二八節

第二八節 内存在を主題とした分析の課題  196
この章の課題(365〜366)/基礎存在論の課題(367)/リヒトゥングの概念/内存在と内部性の違い——「うち」と「あいだ」(368)/開示性の構造(369〜371)/この章の構成(372〜376)

A 〈そこに現にダー〉の実存論的な構成  210
  • 第二九節
  • 第三〇節
  • 第三一節
  • 第三二節
  • 第三三節
  • 第三四節
  • 第三五節
  • 第三六節
  • 第三七節
  • 第三八節

第二九節 情態性としての現‐存在  210
情態性の概念(377〜378)/気分と受動性/存在することの「悪」/事実性と被投性(379〜380)/気分の概念とフッサールの現象学(381)/気分の概念とカントの直観の理論/事実性の二つの次元(382)/情態性の第一の本質的な性格(381〜384)/気分の第二の本質性格(385)/気分の第三の本質性格(386〜387)/世界開放性/情動論(387〜391)/シェーラーの問題提起(391〜394)

第三〇節 情態性の一つの様態としての恐れ  243
「恐れ」の現象を分析するための視点(395)/恐れの三つの構造契機(396)/恐れの第二の構造契機(397)/恐れの第三の構造契機(398)/恐れと自己(398〜400)/アリストテレスの実例(395)/恐れの派生的な諸様態(401)

第三一節 理解としての現‐存在  260
理解の二つの概念(402)/理解と有意義性、世界の二つの極(403)/理解と可能性(404)/可能性の存在と存在可能(404〜405)/理解と自己についての知(406〜408)/投企と被投性(409)/理解と投企の結びつき/カントの概念との類似/存在の可能性とその超越(410)/非本来的な理解と本来的な理解(411〜412)/まなざしの構造(413〜414)/光の形而上学(415〜416)

第三二節 理解と解釈  286
解釈について(417〜420)/解釈の三つの発展段階(421〜422)/解釈の三重の「予‐」構造(423)/解釈学的な循環(424)/「として構造」(425〜427)/意味と意義(427〜429)/解釈学的な循環の文献学的な概念(430〜432)

第三三節 解釈の派生的な様態としての言明  311
現存在の根本的な存在様態としての語り(433)/言明についての考察(434)/解釈の三つの視点からみた言明の第一の意義——予持としての提示(435〜436)/言明の第二の意義——予視としての叙述(437)/言明の第三の意義——予握としての伝達(438)/「として」構造の変様(441)/「予‐構造」の変動(442〜443)/「として」構造の変様についての哲学史的な考察(442〜446)/アリストテレスにおける結合と分離(446〜447)/現代的な論理学への批判(447〜450)

第三四節 現‐存在と語り。言語  338
言語と語り(451)/実存カテゴリーとしての語り/語りと意味、意義、意義の全体性(452)/有意義性と意義の全体性/言葉と意義(452)/言葉の三種類の存在様式(453)/言葉と実存(454〜456)/言明と語りの違い/文の性格と言語行為/語りの四つの構造契機(455〜458)/哲学の言語研究への批判(459)/語ることと聞くこと(460)/さしあたり聞くこと(461〜462)/他者の語りを聞くこと(463〜466)/自己に耳を傾けること/語ることの働き/沈黙することの働き(467〜470)

B 〈そこに現にダー〉の日常的な存在と現存在の頽落  375
公共性と頽落(471〜473)/頽落の概念

第三五節 世間話  379
世間話(474〜477)/頽落した語り(479〜483)

第三六節 好奇心  383
好奇心(484〜487)/「見ること」と「遠さと近さ」の関係(488)/好奇心の三つの構造契機(489)/好奇心と世間話(490)

第三七節 曖昧さ  392
曖昧さとは(491〜499)

第三八節 頽落と被投性  395
頽落と非本来性(500〜501)/頽落と自己の喪失/頽落と原罪(502)/頽落と道徳性(503)/頽落の動性(504〜507)/頽落の四つの動性(508〜512)/渦巻き(513)/頽落と実存

 訳者あとがき
マルティン・ハイデガー    Martin Heidegger
[ 1889 - 1976 ]    ドイツの哲学者。フライブルク大学で哲学を学び、フッサールの現象学に大きな影響を受ける。1923年マールブルク大学教授となり、1927年本書『存在と時間』を刊行。当時の哲学界に大きな衝撃を与えた。翌1928年フライブルク大学に戻り、フッサール後任の正教授となる。ナチス台頭期の1933年に学長に選任されるも1年で辞職。この時期の学長としての活動が、第二次大戦直後から多くの批判をうける。大戦後は一時的に教授活動を禁止された。1951年に復職、その後86歳で死去するまで旺盛な活動を続けた。
[訳者] 中山 元    Nakayama Gen
1949年生まれ。哲学者、翻訳家。主著に『思考のトポス』『フーコー入門』『はじめて読むフーコー』『思考の用語辞典』『賢者と羊飼い』『フーコー 生権力と統治性』『フーコー 思考の考古学』ほか。訳書に『自我論集』『エロス論集』『幻想の未来/文化への不満』『人はなぜ戦争をするのか』(以上、フロイト)、『パピエ・マシン(上・下)』(デリダ)、『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』『純粋理性批判』(カント)、『人間不平等起源論』『社会契約論/ジュネーヴ草稿』(共にルソー)、『職業としての政治 職業としての学問』『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(共にウェーバー)、『善悪の彼岸』『道徳の系譜学』(共にニーチェ)、『存在と時間』(ハイデガー)ほか多数。