アルゼンチンを代表する作家コルタサルの傑作短篇集

奪われた家/天国の扉 動物寓話集

奪われた家/天国の扉 動物寓話集

コルタサル    
寺尾隆吉  訳   

保坂和志氏絶賛!
コルタサルの書く「幻想」は絵空事ではなく、劇的な「真実」のことだ。

作品

夢や悪夢、目に見えない驚異、登場人物の入れ替わり、死、子供の視点、遊び、象徴機能を帯びた動植物など、コルタサル文学の基調となる要素が揃っているのみならず、一風変わったコンマの打ち方と突発的な口語表現の挿入によって独特のリズムを生み出す文体もすでに確立しており、コルタサルの真骨頂を十分に堪能できるだろう。(解説より)


物語

古い大きな家にひっそりと住む兄妹をある日何者かが襲い、二人の生活が侵食されていく「奪われた家」。盛り場のキャバレーで、死んだ恋人の幻を追う「天国の扉」。ボルヘスと並びアルゼンチン幻想文学を代表する作家コルタサルの「真の処女作」である『動物寓話集』。表題作を含む全8篇を収録。

収録作品
  • 奪われた家
  • パリへ発った婦人宛ての手紙
  • 遥かな女 ──アリーナ・レエスの日記
  • バス
  • 偏頭痛
  • キルケ
  • 天国の扉
  • 動物寓話集
〈あとがきのあとがき〉ラテンアメリカ文学の面白さを見直すために──短編作家としてのコルタサル──寺尾隆吉さんに聞く(前編)
〈あとがきのあとがき〉ラテンアメリカ文学の面白さを見直すために──短編作家としてのコルタサル──寺尾隆吉さんに聞く(後編)
フリオ・コルタサル    Julio Cortazar
[ 1914 - 1984 ]    アルゼンチンの作家。ベルギーのブリュッセル生まれ。1918年、家族揃ってアルゼンチンに帰国。大学退学後は首都ブエノスアイレスを離れて地方都市で教員生活を送るが、'45年にブエノスアイレスに戻り、教職を放棄して文学作品の翻訳や短篇、文学論の執筆、通訳資格の取得などに意欲的に取り組む。'46年、ボルヘスに認められ短篇「奪われた家」を雑誌に発表。'51年に留学したパリにとどまり執筆活動を続ける。'63年発表の『石蹴り遊び』が大成功を収め、'64年の『遊戯の終わり』増補版で作家としての地位を確立させた。84年パリで死去。他の短篇に『対岸』『秘密の武器』『八面体』などがある。
[訳者] 寺尾隆吉    Terao Ryukichi

1971年生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教授。ラテンアメリカ文学研究者、翻訳家。著書に『ラテンアメリカ文学入門』『魔術的リアリズム」『ラテンアメリカ文学の出版文化史』(編著)、、訳書に『対岸』『八面体』『奪われた家/天国の扉動物寓話集』(コルタサル)、『水を得た魚』『嘘から出たまこと』『街と犬たち』(バルガス・ジョサ)、『ガラスの国境』(フェンテス)、『復讐の女/招かれた女たち』(オカンポ)ほか多数。