世間から社会的存在であることを否定された男は、「地下室」という、永遠の自意識の中に閉じ込もる。後の5大長編へとつながる重要作品であり、著者の思想が反映された主人公の苦悩をリアルに描いた決定訳!
世間から軽蔑され虫けらのように扱われた男は、自分を笑った世界を笑い返すため、自意識という「地下室」に潜る。世の中を怒り、憎み、攻撃し、そして後悔の念からもがき苦しむ、中年の元小官吏のモノローグ。終わりのない絶望と戦う人間の姿が、ここにある。
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー Ф. М. Достоевский |
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[ 1821 - 1881 ] ロシア帝政末期の作家。60年の生涯のうちに、以下のような巨大な作品群を残した。『貧しき人々』『死の家の記録』『虐げられた人々』『地下室の手記』『罪と罰』『賭博者』『白痴』『悪霊』『永遠の夫』『未成年』そして『カラマーゾフの兄弟』。キリストを理想としながら、神か革命かの根元的な問いに引き裂かれ、ついに生命そのものへの信仰に至る。日本を含む世界の文学に、空前絶後の影響を与えた。 |
[訳者] 安岡治子 Yasuoka Haruko |
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1956年生まれ。ロシア文学者。東京大学名誉教授。主な訳書に『地下室の手記』『貧しき人々』『白夜/おかしな人間の夢』(ドストエフスキー)、『マリヤのための金』『マチョーラとの別れ」(ラスプーチン)、『酔どれ列車、モスクワ発ペトゥシキ行』(エロフェーエフ)、『デルス・ウザラ』(アルセニエフ)。共訳に『フョードロフ伝』(セミョーノヴァ)、『チェゲムのサンドロおじさん』(イスカンデル)。共著に『新版 ロシア文学案内』『岩波講座 文学8・超越性の文学』などがある。 |