限りある人間の命を見据えた鴨長明は、そんなつもりはないままに言葉による建物を建てたのだ、といえるかもしれない。『方丈記』は鴨長明のもう一つの庵だ。その言葉の中に、いまも鴨長明は住んでいるのだ。 (解説より)
災厄の数々、生のはかなさ……。人間と、人間が暮らす建物を一つの軸として綴られた、日本中世を代表する随筆。京都郊外の日野に作られた一丈四方の草庵で、何ものにも縛られない生活を見出した鴨長明の息遣いが聞こえる瑞々しい新訳! 和歌十首と、訳者のオリジナルエッセイ付き。
目次鴨長明 Kamono Choumei |
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[ 1155 - 1216 ] 随筆家・歌人。賀茂御祖神社(下鴨神社)の禰宜・鴨長継の子として生まれる。歌人として活躍し、後鳥羽院による和歌所設置に伴い、寄人に選ばれる。琵琶の名手でもあった。1204年(50歳)、 和歌所から出奔し(河合社禰宜事件)、出家近世する(法名は「蓮胤」)。『新古今和歌集』に10首入集。幼年時には保元・平治の乱、長じてからは治承・寿永の乱が起き、また多くの飢饉や火災、地震を経験した。歌論書に『無名抄』、説話集に「発心集』がある。『方丈記』の成立は58歳ごろと考えられる。 |
[訳者] 蜂飼耳 Hachikai Mimi |
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1974年神奈川県生まれ。詩人・作家。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。詩集『いまにもうるおっていく陣地』で第5回中原中也賞を受賞。詩のみならず、小説、エッセイ、絵本、書評などでも活躍する。他の著書に、詩集『食うものは食われる夜』(第56回芸術選奨新人賞)、『隠す葉』『現代詩文庫・蜂飼耳詩集』、『顔をあらう水』(第7回鮎川信夫賞)、小説『紅水晶』『転身』、文集『孔雀の羽の目がみてる』『空席日誌』『おいしそうな草』、訳書『虫めづる姫君 堤中納言物語』などがある。 |
あとがきのあとがき |
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悟りの境地に至れない! 揺れる男、鴨長明の気楽で悩める五畳半生活──『方丈記』の訳者・蜂飼耳さんに聞く |