言葉はウソをつく。言語には限界がある。

チャンドス卿の手紙/アンドレアス

チャンドス卿の手紙/アンドレアス

ホーフマンスタール    
丘沢静也  訳   

なぜ、若き文豪は筆を折ることにしたのか?
"世紀末ウィーンの神童"の代表作を含む5編

作品

言葉はウソをつくから当てにならない、と気づいたチャンドス卿が、もう書かないという決心を流麗な言葉で伝える「チャンドス卿の手紙」。世間知らずのうぶな青年の成長物語「アンドレアス」(未完)。世紀末ウィーンの天才ホーフマンスタールを代表する表題作を含む散文5編を収録。


内容

『チャンドス卿の手紙』と『論理哲学論考』は、ウィーン・モデルネの聖典である。倫理について具体的に語ることをしないことによって、倫理への熱い思いが伝わってくる。ふたつの聖典が、今もなお古典としての熱量を失うことがないのは、言葉には限界があるのだということを、沈黙を梃子(てこ)にして訴えながら、心臓で考えようとしているからだろう。(解説より)


収録作品
  • [チャンドス卿の]手紙
  • 第672夜のメールヘン
  • 騎兵物語
  • バソンピエール元帥の体験
  • アンドレアス
解説

丘沢静也

フーゴー・フォン・ホーフマンスタール    Hugo von Hofmannsthal
[ 1874 - 1929 ]    ハプスブルク朝オーストリア文化を代表する文豪。世紀末ウィーンでは神童と呼ばれ、流麗な詩や散文作品を書いていたが、現代散文の先駆けである「チャンドス卿の手紙」執筆を転機として、舞台作品に軸足を移す。その集大成が悲劇『塔』だが、作曲家R・シュトラウスと組んだオペラ「ばらの騎士」など人気作も多い。
[訳者] 丘沢静也    Okazawa Shizuya
1947年生まれ。ドイツ文学者。著書に『恋愛の授業』『下り坂では後ろ向きに』『マンネリズムのすすめ』『からだの教養』など。訳書に『ツァラトゥストラ』(ニーチェ)、『変身/掟の前で 他2編』『訴訟』(カフカ)、『論理哲学論考』(ヴィトゲンシュタイン)、『飛ぶ教室』(ケストナー)、『寄宿生テルレスの混乱』(ムージル)、『鏡のなかの鏡』(エンデ)、『数の悪魔』(エンツェンスベルガー)など。
書評
2019.01.20 毎日新聞    立ち止まり、視点を切りかえる(荒川洋治・評)