作品 |
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西洋の近代文学で繰り返し描かれてきたのは、社会や家族の中で期待される役や人間のあり方を演じることを断ったがために嘲笑され、憎まれ、蔑まれ、破滅する人物たちだ。ところがマゾッホは逆なのである。自ら役を設定し、引き受け、そこから快楽を得る。 |
物語 |
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保養地で出会った美しい寡婦ヴァンダと理想の男女関係を築こうとする夢見がちな青年ゼヴェリン。やがて女王と奴隷の支配関係に行き着き、彼女による残酷な扱いに身をゆだねていくが、その嗜虐行為はエスカレートしていき……。かの「マゾヒズム」の語源となった著者の代表作。 |
目次 | |
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毛皮を着たヴィーナス | |
解説 | 許 光俊 |
年譜 | |
訳者あとがき |
レオポルト・フォン・ザッハー=マゾッホ Leopold von Sacher-Masoch |
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1836 -
1895 ]
小説家。出身地のレンベルクは当時オーストリア帝国領で、現在はウクライナのリヴィウ。大学講師や文芸誌の編集をしながら小説を書き、中・東欧文学の旗手として注目された。1870年には奴隷契約を結んだ女性との交際経験をもとにした『毛皮を着たヴィーナス』を発表し、その後は作家業に専念。存命中の'86年に、精神医学者クラフト=エビングが著書『性的精神病理』のなかで「マゾヒズム」の項目を立てている。ほかの著書に『残酷な女たち』『魂を漁る女』など。 |
[訳者] 許 光俊 Kyo Mitsutoshi |
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1965年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部教授。著書に『世界最高のクラシック』『生きていくためのクラシック』『世界最高の日本文学』『世界最高のピアニスト』『これからを生き抜くために大学時代にすべきこと』『クラシックの秘宝』『昭和のドラマトゥルギー』『オペラ入門』など多数。 |