プラトン対話篇とはひと味違う「師の導き」

ソクラテスの思い出

ソクラテスの思い出

クセノフォン    
相澤康隆  訳   
もう一人の弟子による言行録
友人、徳、教育、リーダーシップ
作品
アテナイ出身の軍人・文筆家クセノフォンが、師であるソクラテスの日々の姿を自らの見聞に忠実に記した追想録。師への告発に対する反論と、徳、友人、教育、リーダーシップなどについて哲学するソクラテスを、同世代のプラトンとは異なる視点で描いた、もうひとつの「ソクラテスの対話」。
内容
クセノフォンが描くソクラテスは、真理の探究者ではなく知者であり、言葉と行動を通じて知恵を教え、人々を徳へと導く教育者である。知者にして教育者であることを特徴とする本書のソクラテスは、プラトンの対話篇には見られない、 いわばもう1人のソクラテスである。(訳者)
目次
  
訳者まえがき
  • 第一巻
  • 第二巻
  • 第三巻
  • 第四巻

第一章 告発者たちへの反論(一)──ソクラテスは神々を信奉しなかったか

第二章 告発者たちへの反論(二)──ソクラテスは若者たちを堕落させたか

第三章 飲食と性の快楽について──クセノフォンとの対話

第四章 神々の偉大さについて──アリストデモスとの対話

第五章 自制心について

第六章 質素な生活について──アンティフォンとの対話

第七章 はったりについて

第一章 徳の道と悪徳の道について──アリスティッポスとの対話

第二章 親への感謝について──ランプロクレスとの対話

第三章 兄弟愛について──カイレクラテスとの対話

第四章 友人の有益さについて

第五章 友人の値打ちについて──アンティステネスとの対話

第六章 友人の獲得法について──クリトブロスとの対話

第七章 女の仕事について──アリスタルコスとの対話

第八章 老後の仕事について──エウテロスとの対話

第九章 告発屋への対応について──クリトンとの対話

第一〇章 友人の買い時について──ディオドロスとの対話

第一章 将軍術について

第二章 将軍の心得について

第三章 騎兵隊長の心得について

第四章 将軍術と家政術の関係について──ニコマキデスとの対話

第五章 アテナイの衰退と復興について──小ペリクレスとの対話

第六章 国のリーダーの心得について──グラウコンとの対話

第七章 有能な市民の務めについて──カルミデスとの対話

第八章 善と美について──アリスティッポスとの対話

第九章 徳と知恵について

第一〇章 熟練職人の仕事について──パラシオス、クレイトン、ピスティアスとの対話

第一一章 人を惹きつける方法について──テオドテとの対話

第一二章 身体の鍛錬について──エピゲネスとの対話

第一三章 些事に関する不平不満について

第一四章 宴会のマナーについて

第一章 教育の必要性について

第二章 己を知ることについて──エウテュデモスとの対話(一)

第三章 神々の恵みについて──エウテュデモスとの対話(二)

第四章 正義と法について──ヒッピアスとの対話

第五章 自制心と自制心の欠如について──エウテュデモスとの対話(三)

第六章 事物の定義について──エウテュデモスとの対話(四)

第七章 幾何学、天文学、算術について

第八章 ソクラテスの死──ヘルモゲネスの報告

 解説 相澤康隆
 年譜
 訳者あとがき
 索引
              
クセノフォン    ΞΕΝΟΦΩΝ
[ 430~425 - 355~350 B.C. ]   

古代ギリシャの軍人、文筆家。アテナイのエルキア区出身。若い頃にソクラテスと出会い、弟子となる。前401年にペルシア王子キュロスの遠征に参加し、キュロスの戦死後、1万人のギリシャ傭兵軍の退却を指揮する。前380年代にスパルタ領のスキルスに移り住み、以後は執筆を中心とする生活を送った。主な作品として、歴史関係の『ギリシャ史』、『アナバシス』、『キュロスの教育』、ソクラテスを登場人物とする『ソクラテスの思い出』、『ソクラテスの弁明』、『饗宴』、『家政論』がある。

[訳者] 相澤康隆    Aizawa Yasutaka

1979年生まれ。山梨大学大学院総合研究部准教授。東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究專攻博士課程修了、博士(文学)。古代ギリシャ哲学専攻。訳書 に「政治学」(『アリストテレス全集17』所収、共訳)、『徳は知なり:幸福に生きるための倫理学』(ジュリア・アナス)など。