カミュが仕掛ける「語りの(わな)」に(はま)

転落

転落

アルベール・カミュ    
前山 悠  訳   
『異邦人』『ペスト』に並ぶ 第3の小説、待望の新訳。
作品
『転落』で語られる内容はおしなべて通俗的で親しみやすいものであり、しばしば卑俗でさえある。問題は、その一見して気の置けない語り口の裏に、聞く者を手なずけ( もてあそ ) ぶようなトリックと、その意識を根本から揺さぶろうとする企みが、巧妙に隠されているということである。(「訳者まえがき」より)
物語
アムステルダムの場末のバーでなれなれしく話しかけてきた男。彼はクラマンスという名のフランス人で、元は順風満帆な人生を送る弁護士だったが、いまでは「告解者にして裁判官」として働いているという。五日にわたる自分語りの末に明かされる、彼がこちらに話しかけてきた目的とは?
目次
 訳者まえがき【全文公開】
転落
 解説 前山悠
 年譜
 訳者あとがき
アルベール・カミュ    Albert Camus
[ 1913 - 1960 ]   

仏領アルジェリア出身のフランスの作家。家庭の貧困や結核に苦しみながら、アルジェで大学までの教育を受ける。演劇活動や新聞社での仕事などを経て、1942年に人間存在と世界の不条理を主題として小説『異邦人』と哲学エッセー『シーシュポスの神話』を刊行。戦中・戦後はパリでレジスタンス的姿勢の新聞「コンバ」の編集に携わり戦争についての論説を発表した。1947年に小説『ペスト』で高い評価を得た後も、長篇『転落』、短篇集『追放と王国』、戯曲『戒厳令』『正義の人びと』、哲学エッセー『反抗的人間』などを発表し、1957年にノーベル文学賞を受賞した。1960年、自動車事故により46歳で死去。

[訳者] 前山 悠    Maeyama Yu
1981年新潟県生まれ。パリ第七大学 (現パリ大学) 博士課程修了(文学博士)。学習院大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。大分県立芸術文化短期大学専任講師。訳書に『千霊一霊物語』(デュマ)など。