翻訳は演奏に似ている。ピリオド奏法は、自分が慣れ親しんできた流儀を押し通すのではなく、相手の流儀をまず尊重する。演奏家の「私」ではなく、作曲家の「私」を優先させるのだ。(訳者)
家族の物語を虫の視点で描いた「変身」。もっともカフカ的な「掟の前で」。カフカがひと晩で書きあげ、カフカがカフカになった「判決」。そしてサルが「アカデミーで報告する」。カフカの傑作4編を、もっとも新しい〈史的批判版〉にもとづいた翻訳で贈る。
フランツ・カフカ Franz Kafka |
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1883 -
1924 ]
チェコのプラハ生まれ。父母はユダヤ人。法学博士号を取得後、労働者傷害保険協会に勤め、サラリーマン生活を送りながら執筆を続ける。生前はほとんど無名で、出版された作品もごくわずか。その作品は、何が書かれているか細部はクリアだが、全体としてどういう意味なのか、さまざまな解釈を呼ぶ。1917年に結核と診断され、’24年死去。作品の大部分は、死後、親友マックス・ブロートの編集によって出版され、世界的な評価を得る。代表作としては短編『判決』『変身』、未完の小説 『訴訟』『城』など。 |
[訳者] 丘沢静也 Okazawa Shizuya |
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1947年生まれ。ドイツ文学者。著書に『恋愛の授業』『下り坂では後ろ向きに』『マンネリズムのすすめ』『からだの教養』など。訳書に『ツァラトゥストラ』(ニーチェ)、『変身/掟の前で 他2編』『訴訟』(カフカ)、『論理哲学論考』(ヴィトゲンシュタイン)、『飛ぶ教室』(ケストナー)、『寄宿生テルレスの混乱』(ムージル)、『鏡のなかの鏡』(エンデ)、『数の悪魔』(エンツェンスベルガー)など。 |