物語 |
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日清戦争の戦場となった平壌。砲弾が降り注ぐなか、多くの市民が逃げ惑い、家族の生死もわからずにいる。親とはぐれた七歳のオンニョンは情に厚い日本人軍医に引き取られ、新しい人生を歩むことになるが……。運命に翻弄される個人の姿を描く、「朝鮮で最初の小説家」と称えられた著者の代表作。 |
内容 |
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韓国の文学史には、古典文学と近代小説のあいだに「新小説」というジャンルが狭まっている。その代表的作品として、韓国の受験生ならタイトルぐらいは暗記しているのが、李人稙の『血の涙』。日本の存在を抜きにしては語ることのできない時代を生きた著者による、近代朝鮮の経験が刻まれた作品である。 |
目次 |
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血の涙 |
解説 波田野節子 |
年譜 |
訳者あとがき |
主要登場人物しおり |
李人稙(イ・インジク) 이인직 |
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[
1862 -
1916 ]
韓国文学史における古典と近代小説の間のジャンル「新小説」の代表的作家。青年期、朝鮮が各国と開国条約を結ぶなか、欧米の技術や制度を取り入れて政治改革を行おうとする開化派に所属する。王妃暗殺事件の余波で1896年に日本へ亡命するが、1900年には転じて官費留学生に。同年、東京政治学校の正規学生となり、翌年には『都新聞』の見習い研修生として働き始めもする。1902年、同紙にて著者初の創作となる短篇「寡婦の夢」を日本語で発表。帰国後は新聞事業に携わり、1906年に主筆を務めた天道教の機関紙『萬歳報』にて『血の涙』の連載を始める。韓国併合の際には首相・李完用の秘書役としてその準備に関する政治活動を行った経歴から、現在の韓国では「親日派」、対日協力者と呼ばれることがある。 |
[訳者] 波田野節子 Hatano Setsuko |
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1950年生まれ。韓国近代文学研究者。新潟県立大学名誉教授。著書に『李光洙──韓国近代文学の祖と「親日」の烙印』『韓国近代作家たちの日本留学』『韓国近代文学研究──李光洙・洪命憙・金東仁』、翻訳書に『無情』(李光洙)、『金東仁作品集」(金東仁)などがある。 |
書評 | |
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2024.07.13 朝日新聞 | 藤井光が薦める文庫この新刊! |