暴力と不信が満ちる町で、人は?

悪い時

悪い時

ガブリエル・ ガルシア・マルケス    
寺尾隆吉  訳   
個人の秘密を暴く謎のビラ……
『百年の孤独』へと連なる問題作。
物語
十月の雨の朝、外出しようとラバに跨ったセサル・モンテロは、戸口に貼られた一枚のビラを目にする。行き先を変更した彼は、クラリネット吹きのパストールの家に入り込むと、銃声を響かせたのだった……。「暴力時代」後のコロンビア社会を覆う不穏な空気が蘇る、腐臭と秘密に満ちた物語。
内容
『悪い時』によって私は壁際に追い詰められた。だが、『悪い時』がなければ『百年の孤独』は書けなかったことだろう。壁際に追い詰められたら、その壁を壊す以外に出口はないのだ。 ──ガルシア・マルケス
目次
悪い時
 解説 寺尾隆吉
 年譜
 訳者あとがき
 おもな登場人物しおり
ガブリエル・ガルシア・マルケス    Gabriel García Márquez
[ 1927 - 2014 ]    コロンビアの小説家。カリブ地域の小村アラカタカに生まれる。青少年期には、『悪い時』の「町」のモデルとなったスクレでも休暇等を過ごす。ボゴタ大学で法学を専攻するが、後に退学。新聞や雑誌の記者をしながら小説の執筆を続け、1955年に初の長編『落葉』を刊行。同年からヨーロッパとアメリカ大陸の各地を転々とする。1966年「悪い時』の作者認定版刊行。1967年の 『百年の孤独』の大ヒットを機に、世界的名声を得る。その後も、『族長の秋』 (1975)、『予告された殺人の記録』 (1981)、『コレラの時代の愛』 (1985)、『迷宮の将軍』 (1989)、『愛その他の悪魔たち』 (1994)など、次々に話題作を発表した。 1982年にノーベル文学賞を受賞。
[訳者] 寺尾隆吉    Terao Ryukichi

1971年生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教授。ラテンアメリカ文学研究者、翻訳家。著書に『ラテンアメリカ文学入門』『魔術的リアリズム」『ラテンアメリカ文学の出版文化史』(編著)、、訳書に『対岸』『八面体』『奪われた家/天国の扉動物寓話集』(コルタサル)、『水を得た魚』『嘘から出たまこと』『街と犬たち』(バルガス・ジョサ)、『ガラスの国境』(フェンテス)、『復讐の女/招かれた女たち』(オカンポ)ほか多数。