作品 |
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西鶴は極貧生活をおくる町人を客観的に描いたわけではない。共感があるからこそ、それが笑いの対象となる。読者も、切羽詰まった大晦日の町人の貧困生活に共感する、つまり「わいも同じやんか」と感じるからこそ、思わず失笑してしまう。『世間胸算用』は『好色一代男』とは違う発想の笑いを創作した新しい喜劇的小説だと思う。(訳者) |
物語 |
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一年の総決算である大晦日その日を舞台に、貧乏と借金に追われる町人の悪戦苦闘ぶりを描いた連作短編集。正月飾りのことで息子を叱る隠居婆、借金取りから逃げるための「亭主の入れ替わり」策、貧困にあえぐダメ亭主と女房など、滑稽さやおかしさをストレートに伝える関西弁の新訳。 |
目次 | ||
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解説 中嶋隆 | ||
年譜 | ||
訳者あとがき |
井原西鶴 Ihara Saikaku |
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1642〈寛永19〉 -
1693〈元禄6〉 ]
江戸時代前期を代表する俳諧師、浮世草子作者。大坂の商家に生まれる。39歳で、一日に4000句を一人で詠む「矢数俳諧」に成功して名声を得た。41歳時に浮世草子『好色一代男』を出版。当時の出版界に衝撃を与え、以降人気作家となる。『好色五人女』『好色一代女』『男色大鑑』『日本永代蔵』『武家義理物語』『世間胸算用』など、次々に問題作を刊行し、近代以降の作家にも多大な影響を及ぼす。52歳歿。 |
[訳者] 中嶋 隆 Nakajima Takashi |
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1952年、長野県生まれ。早稲田大学名誉教授。作家。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は西鶴などの江戸時代文芸・文化研究。著書に『西鶴と元禄メディア』『初期浮世草子の展開』『西鶴と元禄文芸』『西鶴 「誹諧独吟一日千句」研究と註解』等多数。小説『廓の与右衛門 控え帳』で第8回小学館文庫小説賞受賞。時代小説は他に『はぐれ雀』『補陀落ばしり物語』など。訳書に『好色一代男』(井原西鶴) がある。 |