『狂気の愛』は、愛の囚われ人----愛に仕える者としての自己の全体を描いているだけでなく、文学観、芸術観、世界認識、行動の倫理の全体を呼び寄せ、再検討するテクストとなっている。(解説より)
「愛のどんな敵も、愛がみずからを讃える炉で溶解する」。難解で詩的な表現をとりながら、美とエロス、美的感動と愛の感動とを結びつけ、執拗に考え抜く。その思考実験の果てに、あまりにも美しい娘(と妻)への、究極の愛の手紙が置かれる。
アンドレ・ブルトン André Breton |
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[ 1896 - 1966 ] フランスの詩人・批評家。1920年ころからシュールレアリスム運動を提唱。生涯にわたり、その中心的存在として多方面の活動を展開、主導した。20世紀以降の現代芸術全体に、圧倒的な影響を与えている。愛多き存在としても知られる。著作に、『地の光』『白髪の拳銃』『ナジャ』『通底器』『秘法十七』『シュールレアリスム宣言集』などの詩集・評論集がある。 |
[訳者] 海老坂 武 Ebisaka Takeshi |
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1934年東京生まれ。東京大学大学院博士課程修了。一橋大学、関西学院大学教授を歴任。フランス文学専攻。著書に『否認の言語へのノート』『パリ−ボナパルト街』『<戦後>が若かった頃』『かくも激しき希望の歳月』『思想の冬の時代に』『サルトル−「人間」の思想の可能性』『祖国より一人の友を』など多数。訳書に『番犬たち』(ニザン)、『サルトル 自身を語る』(サルトル)、『文学とは何か』『家の馬鹿息子1、2、3』(以上サルトル、共訳)など。 |