人間存在の脆弱さという主題や、緻密きわまる小説の構成、そして繊細かつスピーディでありながら、ときとして病的なまでに偏執的にたたみかけるのが、マンシェットの文体の魅力だ。(訳者)
精神を病み入院していたジュリーは、企業家アルトグに雇われ、彼の甥であるペテールの世話係と なる。しかし身代金目当ての4人組のギャングにペテールともども誘拐されてしまう。ふたりはギャングのアジトから命からがら脱出。殺人と破壊の限りを尽くす、逃亡と追跡劇が始まる!
ジャン=パトリック・マンシェット Jean-Patrick Manchette |
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[ 1942 - 1995 ] フランスの小説家。マルセイユ生まれ。パリ大学ソルボンヌ校在学中より左翼政治運動へ傾倒。その後、大学を中退し、様々な職業で生計を立てる。1971年、ガリマール社より共同執筆と単独執筆の犯罪小説が相次いで刊行され、小説家デビュー。1972年には本書が出版され、翌年の「フランス推理小説大賞」を受賞。一躍、フランス暗黒小説のリーダー的存在となる。主な著書に『殺しの挽歌』『殺戮の天使』『限りなき狙撃者』など。 |
[訳者] 中条省平 Chujo Shohei |
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1954年生まれ。学習院大学教授。仏文学 研究のほか、映画・文学・マンガ・ジャズ 評論など多方面で活動。主著に『カミュ伝』『恋愛書簡術』『反=近代文学史』『フランス映画史の誘惑』。訳書に『マダム・エドワルダ/目玉の話』(バタイユ)、『恐るべき子供たち』(コクトー、共訳)、『肉体の悪魔』 (ラディア)、『花のノートルダム』(ジュネ)、『消しゴム』(ロブ=グリエ)、『狭き門』(ジッド、共訳)、『にんじん』(ルナール)、『すべては消えゆく』(マンディアルグ)ほか多数。 |