「飢え」が支配する荒野で、ただ生きるために弱きものを殺す自然の掟。欲深い人間に利用され、闘いを強いられる殺戮の日々。野性の血を研ぎ澄ます孤独な灰色狼の目を通して描かれる人間と文明社会。
犬の血を4分の1引いて、北米の原野に生まれた狼「ホワイト・ファング(白い牙)」。親や兄弟が次々と死んでいく"自然"のなかで、強く、狡く生きていく。だが、あるとき人間に飼われることになり、人間の残虐さや愛情に触れることで、心のなかにさまざまな葛藤が生まれるのだった。
ジャック・ロンドン |
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1876 -
1916 ]
アメリカの小説家。サンフランシスコで貧しい家庭に育ち、15歳の頃から牡蠣密猟、アザラシ猟船乗組員、発電所の石炭運搬など様々な職につき、各地を放浪する。1897年、クロンダイクのゴールドラッシュに参加するが壊血病にかかり帰郷。1903年、北方での見聞をもとに書いた『野性の呼び声』が大ヒットし、人気作家となる。以後、『どん底の人々』『海の狼』『ホワイト・ファング』などを精力的に発表する。40歳で死去。 |
[訳者] 深町眞理子 Fukamachi Mariko |
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1931年生まれ。英米文学翻訳家。訳書に、『ザ・スタンド』(キング)、『ルーンの杖秘録』シリーズ(ムアコック)、『光の王』(ゼラズニイ)、『渇きの海』(クラーク)、『親指のうずき』(クリスティー)、『くじ』(ジャクスン)、『アンネの日記 増補新訂版』(フランク)、『野性の呼び声』(ロンドン)ほか多数。著書に『翻訳者の仕事部屋』がある。 |