ダーウィンは、自らが唱える「自然淘汰による変化を伴う由来説」に対し、緻密な議論をもって予想される反論、異論をあらかじめ封じる。現代の進化論の諸分野を網羅したこの先見性は、まさに驚異である。
「なぜかくも多様な生物がいるのか」。ダーウィンはひとつの結論にたどり着いた。すべての生物は共通の祖先を持ち、少しずつ変化しながら枝分かれをしてきたのだ。つまり、「じつに単純なものからきわめて美しくきわめてすばらしい生物種が際限なく発展し、なおも発展しつつある」のだ。
チャールズ・ダーウィン Charles Robert Darwin |
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[ 1809 - 1882 ] イギリスの自然史学者、著述家。イングランド北西部の商業都市シュルーズベリで、6人兄弟姉妹の5番目、次男として生まれる。地元のパブリックスクール卒業後、エジンバラ大学医学部に入学したが1年半で退学し、ケンブリッジ大学に転学。卒業後、英国海軍測量艦ビーグル号に乗り込み、5年をかけて世界を周航した。帰国後は在野の著名な自然史学者として研究と著作に従事する。1859年、『種の起源』を出版し、世界を激震させた。1882年に自宅で死去。葬儀はロンドンのウェストミンスター・アビー(大修道院)で執り行なわれ、遺体もそこに埋葬された。代表作は『ビーグル号航海記』、『人間の由来』、『人間と動物の感情表現』、『ミミズによる腐植土の形成』など。 |
[訳者] 渡辺政隆 Watanabe Masataka |
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1955年生まれ。サイエンスライター。同志社大学特別客員教授、東北大学特任教授。専門は進化生物学、科学史、サイエンスコミュニケーション。著書に『〈生かし生かされ〉 の自然史』『一粒の柿の種』『ダーウィンの遺産』『科学で大切なことは本と映画で学んだ』『科学の歳事記』ほか。訳書に『種の起源』『ミミズによる腐植土の形成』(ダーウィン)、『ロウソクの科学』 (ファラデ一)、『ワンダフル・ライフ』 (グールド)、『生命40億年全史』 (フォーティ)、『「進化」大全』 (ジンマー)、『シマウマの縞 蝶の模様』 (キャロル)ほか多数。 |