2009.10.08
黒原敏行さんミニトークー@青山ブックセンター六本木店
9月に刊行された『闇の奥』(コンラッド)の翻訳者・黒原敏行さんのミニトークが、9月30日(水)19:00から青山ブックセンター六本木店で行われ、『闇の奥』と同時期に刊行されたマッカーシーの『越境』(ハヤカワepi文庫)の2作を中心に、"翻訳家 黒原敏行"の日常も垣間みられるトークとなりました。
に寄せた「この訳を経た黒原敏行は、クルツ探しの一行のように、決定的なものをその翻訳人生に被っただろうという、うれしいような恐ろしいような予感がする。」という書評文の紹介とともに、読みやすく、すばらしい訳との激賞が。
黒原さんは、読みやすくできたかどうか、と恐縮気味にその言葉を受けながらも、「原文が難解だからと言って、翻訳が難解であることはないし、読みながら、いいところで読者がひっかかる訳にはしたくなかった。コンラッドは研究している方も多いので、意訳しすぎと言われるかもしれないが、翻訳はいろんな訳があっていいと思う。原文とぴったり同じということはありえない。日本語として読みやすいことが大切だと思う。」と。
ご自身の読書体験としては、「高校時代にドストエフスキーにはまりました。その経験は、現在訳している作品の傾向に繋がっているかもしれません。」
また、極限的な状況で展開する作品を訳されることの多い黒原さんですが、「夏は冷房を使わず、冬も暖房は入れないでひざかけのみ」というご自分の肉体も追い込んでの翻訳!
訳しあぐねている時は、「映画『セブン』のように、刑事がボードに貼った事件現場写真や証拠を見ながらあれこれ考えるシーンがありますが、あれみたいなこともします(笑)。」
現在は、マッカーシーの代表作『ブラッド・メリディアン』の翻訳を進行中とのこと。こちらの刊行も期待して待ちたいところです。
■ほぼ日刊イトイ新聞の