故・安西徹雄氏の訳によるシェイクスピアの戯曲『マクベス』を、「演劇集団 円」の俳優たちが読み上げ、小林章夫氏(上智大学教授)が解説講演をするイベント・シリーズ。6月の国立国会図書館(東京本館/関西館)に続き、10月16日の軽井沢、同23日の上智大学と、連続で開催されました。
今年、軽井沢を本の文化で彩られた街にしようという"まちづくり"企画「本のまち・軽井沢」が、軽井沢町を中心としてスタート。『マクベス』のリーディングもその立ち上げ企画のひとつとして、旧軽井沢銀座からほど近い軽井沢ユニオンチャーチで開かれました。この教会はもともと官営鉄道の高級技師用クラブハウスだった建物を1906(明治39)年から教会として使用している、歴史ある木造建築。古い学校のような外観に、内部は骨組みが照明で照らされ、白樺の十字架が入り口と室内に掛けられています。17世紀に書かれたシェイクスピアの戯曲を聴くのにぴったりの、趣深い空間です。
一方、上智大学ではすり鉢状の講堂で公演され、半円形に並ぶ座席から観客の視線と熱気が舞台上に注がれていました。 この「朗読劇」では舞台セットは使用せず、俳優はみな黒い服を着ているだけで衣装は無し、照明はスポットのみ、効果音も最小限に抑えられています。舞台上には譜面台が並べられ、俳優は交互に前に出て台詞を読み上げる形式で、マクベス役の有川博氏をはじめ4人の俳優たちの発する言葉だけが会場の空間を埋めていきます。それだけにシェイクスピアと安西徹雄氏が生み出した言葉の力が、俳優の体を媒介として、ひとりひとりの観客にそのまま伝わってくるように思えます。観客も場面が進むに従ってその魅力を感じた様子で、徐々に会場の温度が上がっていくようでした。
「最初は作りがシンプル過ぎるように思えたのですが、そのぶん、台詞の細部や役者の呼吸まではっきりとわかりました。聞いているうちにまるで背景や衣装まで見えてくるようで、こちらの想像力を刺激する舞台でした」(50代男性)
「台詞の力が強烈でした。古い時代の話なのに、人物の感情や心がわかりやすく強く入ってきました。現代劇はよく観に行きますが、これほど台詞の重みを感じたことはありません」(30代女性)
両会場とも大成功に終わった安西シェイクスピアのリーディング劇は、今後も開催して参ります。ぜひ会場に足を運んで、言葉のもつ力を体験してください。
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