2011.07.12
7月の新刊は『人口論』! 本日発売です。
7月の新刊、『人口論』(マルサス/斉藤悦則 訳 定価(本体 900円+税) )は、本日発売です!
「人口は等比級数的に増加するが、食糧は等差級数的にしか増えない。そして、人の性欲はなくならない。」シンプルな命題を提起し、人口と食糧のアンバランスが生む問題に切り込んで、19世紀の進歩思想に大きな影響を与えた本書は、現在の世界においてもますます輝きを増している。
〈訳者あとがきより〉
マルサスの『人口論』は若々しい天才の作品である、とケインズは評している(ケインズ『人物評伝』)。
『人口論』初版は匿名で出版され、たちまち大評判となった。つまり、たまたま読んだ人がみんな「おもしろい本を見つけた」と思い、その興奮をつぎつぎと口伝えで広めたからである。(中略)
このおもしろさとわかりやすさは、著者の手持ちの資料の少なさと、それでもあえて言いたいことを言い切る剛胆さによる。したがって、著者がより多くのデータをそろえ、中身を充実させ、自分の名前も明らかにした第二版以降は、むしろその分だけおもしろくなくなる。
この『人口論』の初版が出版された1798年は、フランス革命から10年近く経過した時代。本書の解説で的場昭弘さん(神奈川大学経済学部教授)は、
「1798年に書かれたマルサスの『人口論』も、当時の人類の傲慢な進歩思想に対する警鐘の書として出現した。1798年といえば、フランス革命がもたらした理性の歴史が失望へと変貌していった時代である。(中略)
イギリスでは、エドムント・バークを代表としてフランス革命に対する嫌悪、とりわけ理性による進歩主義に対する懸念を表明するものが多くいた。そうした人物の一人がマルサスであった。だからこそ、マルサスは19世紀の社会主義者や共産主義者から眼の敵とされるのである。」
そして
「なぜ、マルサス主義の議論は消えることなく続くのだろう。マルサスの言葉のもつ明瞭さにまずその要因があることは間違いない。」
と書いています。
今もなおアクチュアルな「若々しい天才の作品」を、斉藤悦則さんのクリアな訳文でぜひお読みください!
《プロフィール》
マルサス T.R.Malthus
[1766−1834] 古典派経済学を代表するイギリスの経済学者。父はルソー、ヒュームと親交があり、その影響を受けて育つ。ケンブリッジ大学を卒業後研究員になり、のち牧師となる。32才の時に匿名で出した本書『人口論』(初版)は当時のイギリス社会に大きな衝撃を与えた。その後名前を明かしたうえで第2版を出し、約30年をかけて第6版までを刊行した。39才で新設の東インド会社付属学院の教授に就任、歴史、経済を教える。穀物の輸入自由化をめぐりリカードウとの論争が有名である。著書に『経済学原理』『経済学における諸定義』『価値尺度論』など。
[訳者]斉藤悦則 Saito Yoshinori
1947年生まれ。鹿児島県立短期大学教授。共編著に『ブルデュー社会学への挑戦』。訳書に『プルードンの社会学』(アンサール)。共訳書に『出る杭は打たれる』(レノレ)、『構成的権力』(ネグリ)、『システムの解体』(シャバンス)、『逆転の思考』(コリア)など。