中山元さんの講座--「自由の哲学者、カント」の第5回は、今週金曜日、7月29日に開催します。前回6月24日の第4回講座に参加された山下智弘さん(大学2年生)からは次のような感想をいただいています。今からでも参加のお申し込みは可能です。興味をもたれた方は、ぜひ足をお運びください。
中山先生の四回目の講演では、感性を扱う「純粋理性批判」と超感性を扱う「実践理性批判」を統一するものとして、また個的な理性の論述である前二つの批判書に対して、社会内での理性の批判としての「判断力批判」においての自由の問題について講演されましたが、二時間以上にわたって密度の濃い解説をされ、非常に意義深い時間でした。
前半では個人的な感覚の満足である快適さや、理性の判断である善のように選択の余地のないものとは違い、人間の関心とは関係のない美こそ唯一の自由な適意であり、欲望や論理の強制から普遍性をもつ、だからこそ美学的判断力は自由を象徴するものであるということを中心に、美と崇高んいついて解説され、後半では、そのような自由を阻害する欲望の専制から意志を解放する「薫育の道」が、欲望の限りなさや人間の悪の側面からして不可能と考えられる幸福そのものではなく、幸福に相応しい存在になるという、道徳論的な目的の形式を達成することになる----それが目的の連関を作り出す唯一の存在である人間を終着点とした、自然の外的目的の究極の姿であるという議論を解説されました。
カントの著作は、その文章の難しさに加え、もちろん内容の面でも近寄りがたさを感じさせるものがありますが、既に「判断力批判」を読んだことのある方にとっての解説としてももちろん、私のように、その取っ付きにくさからまだ読んだことのない参加者にとっても、実際に読むにあたっての格好の手引きとなると思います。
中山先生は、日本語に消化されたわかりやすい訳を用いて、翻訳という形でもカントの思想を非常に近づきやすい形にするべく尽力されていますが、内容面からの解説も、カントの著作に挑戦する意欲をかき立てられる魅力的なものでした。まさにカントの言葉であり啓蒙の標語である、「自分自身の理性を行使する勇気を持て」を実現する一歩であると感じます。残る二回の講演にも期待しています。
[ 山下智弘/大学2年生 ]
また、ドイツ文化センターのオフィシャルブログにも第4回講座の模様が掲載されています。こちらもぜひご覧下さい。
■ ドイツ文化センター オフィシャルブログ いよいよ残すところあと2回となりました。参加のお申し込みは下記までどうぞ!