『世界は文学でできている
----対話で学ぶ<世界文学>連続講義』
沼野充義 (編著)
リービ英雄/平野啓一郎/ロバート キャンベル/飯野友幸/亀山郁夫
2012年1月17日発売
定価(本体1,700円+税)
〈目次〉
本書は、東京大学教授のロシア文学者・沼野充義先生が5人のゲストを迎え、対談形式で行った世界文学についての連続講座(財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)主催)を再構成したものです。
ここで取り上げている「世界文学」は、もはや日本文学と英文学、仏文学、独文学あるいはロシア文学の壁も取り払った、まったく新しい世界文学です。
その「新しい世界文学」について、最前線で活躍する作家と研究者が縦横に語り合いました。
対談のゲストは、リービ英雄さん、ロバート キャンベルさん、平野啓一郎さん、飯野友幸さん、亀山郁夫さんの5名。
リービ英雄さんは、外国人が日本語で文学を表現する可能性と困難について語ります。そもそも日本文学は世界文学かという沼野先生の問いかけに、外国人である自分を語るのに最適な言語が日本語であるという、従来では考えられなかった「日本文学」の可能性について言及しながら答えています。
平野啓一郎さんは、ネット時代の文学の可能性について、若い世代の表現者として、鋭い分析を試みます。また、自らの文学についても興味深い話を。
テレビでおなじみのロバート キャンベルさんも「Jブンガク」の試みについて、その意図を詳しく述べています。
上智大学教授の飯野友幸さんは、詩という忘れられがちな文学ジャンルについて、特に外国詩を翻訳することの困難を語りながら、日本語の最前線を同時に俎上にのせます。
最後の対談は、『カラマーゾフの兄弟』の新訳で日本の読書界に大きな衝撃を与えた亀山郁夫さんです。長年の友人でもある二人の、19世紀ロシア文学から現代日本文学に及ぶ時空を超えての熱い対談が展開されます。ふたりとも驚くほど率直に自らの文学観を語っていて、読みどころ満載です。
これらのスリリングな対談は、沼野先生の該博な知識と長い研究に裏打ちされた世界文学の理解を背景におこなわれています。文学といえば「衰退」の一語で片づけられてしまう昨今の風潮があるのは確かですが、どっこい文学は、もはや日本語という境界をやすやすと潜り抜けながら、新しい展開をしているのだということがわかります。
そして、巻末には、これらの対談が行われた後に起きた東日本大震災に言及された沼野先生の後書きがあり、この時代の文学を考える上で何が重要なのかを、もう一度考えさせられます。
世界文学をとおして、いまこの時代をどう生きるべきか、われわれはどんな時代を生きつつあるのか、是非本書を手に取って最深の知見に接していただきたいと思います。