東京ドイツ文化センターでの「ドイツの古典図書を古典新訳文庫で読む」。この企画は、光文社古典新訳文庫の中から、ドイツの文化を理解する上で重要な図書を取り上げ、その訳者とともに徹底的に読んでみようというものです。 第1弾は、中山元さんを講師に迎え「自由の哲学者、カント」と題して連続6回の講演会を、第2弾は岸美光さんを講師に迎え、トーマス・マンの『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』を3回に渡って読み解きました。 そして、第3弾の今回は、スイスを代表する作家、フリードリヒ・デュレンマットを取り上げます。デュレンマットはドイツ語で書いた作家であり、彼の作品は広い意味でのドイツ文学に含まれます。 7月12日に発売する新刊『失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選』の翻訳者・増本浩子さんを講師に迎え、この本に収録されている4つの短編小説の解説をしていただきながら、デュレンマットの文学の持つ普遍性とアクチュアリティに関して、3回連続で語っていただきます。 質疑応答の時間もありますので、深くドイツ文化、デュレンマットの世界を理解できる絶好の機会です。ぜひご参加ください。 (追加で決定した内容は、光文社古典新訳文庫のTwitterアカウント(kotensinyaku)、このBlogでお知らせします。)
日本の一般読者にはまだあまり知られていないスイスの作家デュレンマットについて紹介しながら、スイスのドイツ語文学の特徴と、その背景にある社会や文化について考える。
第2回 迷宮としての世界-「トンネル」と「巫女の死」 日時:2012年9月14日(金)18:30〜デュレンマットは世界とそこに生きる人間を表現するのに、迷宮と、迷宮に閉じ込められたミノタウロスという比喩を使うことを好んだ。「迷宮としての世界」が作品の中で具体的にはどのように描かれているかを、『トンネル』と『巫女の死』を例にみていく。
第3回 故障のドラマトゥルギー-「故障」と「失脚」 日時:2012年10月5日(金)18:30〜デュレンマットは独自の演劇論に基づいて、自作の戯曲のほとんどを喜劇と名づけたが、そのコンセプトは小説にも生かされている。デュレンマットの喜劇観を理解するのに特に重要な作品となっている『故障』を中心に、そのドラマトゥルギーについて考察する。
[増本浩子さんプロフィール] 1960年生まれ。神戸大学大学院人文学研究科教授。専門はドイツとスイスの現代文学・文化論。著書に『フリードリヒ・デュレンマットの喜劇』、共訳書に『ブレヒト 私の愛人』(ベアラウ)、『ドイツの宗教改革』(ブリックレ)、『ハルムスの世界』(ハルムス)など。