2012.07.24
《書評》『トム・ソーヤーの冒険』―日本経済新聞2012年7月22日
「平易な文章で読みやすいという印象を払拭するような、格調高い文体で全編が彩られている。マーク・トウェインが19世紀に執筆した原著の表現により近づけたという完訳版だ。
翻訳した土屋京子氏は当初、現代ふうの簡潔な文に置き換えることも考えた。しかし「トムはただの無邪気でわんぱくな少年ではない。見えっぱりだったり叱られていじけたりと、子供の繊細な内面をトウェインは丁寧に描写している」と感じ、原文の硬質な言葉や入り組んだ表現を生かすことにしたという。」
「日本では子供向けに内容を抜粋した抄訳の本が多かった。『トム・ソーヤーの冒険』でも『塀塗り』など一部の章だけが多くの人の記憶に残っている。全体像を知らないのはもったいないという気持ちが強く、手に取りやすい装丁と価格で全訳本を出したかった。」
そして、ヴィレッジブックスの「新訳"おとなの少女文学"」シリーズ、新潮文庫からは、「新訳名作コレクション」の一環で『トム・ソーヤーの冒険』、『オズの魔法使い』、『海底二万里』が3ヶ月連続で出版されるというという、まさに"相次ぐ児童文学の新訳刊行"。
いよいよ夏休みシーズン到来。大人の夏休みに、子供の頃に読んだ名作をもう一度手に取ってみてはいかがでしょうか。