こんにちは。古典新訳文庫の傭兵編集者Oです。
トルストイの大河恋愛小説『アンナ・カレーニナ』が3月末から公開になっています!古典新訳文庫の『アンナ・カレーニナ』も、全4巻映画オビになって書店で展開中です。例によって試写会に行きそびれたので自腹で映画を観てきましたが、なかなか楽しめました。感想や見どころなどを紹介したいと思います。
とはいえ『アンナ・カレーニナ』はこれまでも何度も映像化、舞台化されてきた作品だけに、いまさらどうやって新味を持たせるのか、というところが一番難しそうだなと思っていたのですが、今回の映画はなかなか凝っていて「なるほど、そうくるか!」と感心します。芝居小屋の舞台で演じられているような場面から始まり、その舞台の「枠」をうまいこと出たり入ったりし、幻想的で非現実的な場面があったかと思うと、ほかの場面では街の背景が「書き割り」だったり、また客席や舞台裏に物語が洩れ出していったり......130分の長い映画ですがとにかく飽きることなく映像に魅了されます! そもそも本作はロシアが舞台なのにイギリス人俳優が英語で演じるイギリス映画なので、シリアスすぎる設定なんか面白くないわけで、その点実によく考えられた演出だと思います。
また、アカデミー賞で衣装デザイン賞を獲っただけあって、登場人物たちの花々しい衣装、立ち居振る舞いなどは見事です。結構面白かったのは舞踏会でのダンスシーン。着飾った男女が、なんだか見たことないようなプログレッシブな社交ダンスを、日体大の集団行動ばりの正確さで華麗に踊ってます。あんな華麗にな!と思います。たぶん。
130分の映画とはいえ、原作は古典新訳文庫で全4巻。収まりきるのか?あるいは話を詰め込みすぎて分からなくなるのではないか?などの懸念はあったわけですが、その点は著名な脚本家トム・ストッパードの腕が素晴らしいのでしょう、人名などに混乱することなく見られました(と、予備知識なく観たワイフも申しておりました)。また結末にいたるまで、わりと原作「全部のせ」的に忠実に再現しているように思いました。とはいえ、物語の背景、細かい人物同士のつながりを深く理解するには、原作を読むことでより楽しめると思います。
こういう映画なので基本的には美女・美男ぞろいのキャストなのですが、アンナ役キーラ・ナイトレイはさておいて、端役なのに存在感全開バリバリなのが、ベッツィ皇女役のルース・ウィルソンさんです(画像は各自でググってね)。
彼女はBBCのTVドラマ『刑事ジョン・ルーサー』で主人公を手玉にとる女殺人者を演じて一躍人気になったわけですが(この彼女の演技は強烈で、最初はなんでもない役だったのがどんどん魅力的になっていきます)、本作でも難しい役どころをコケティッシュな「アヒル口」で演じています。もうね、彼女を観るために『アンナ・カレーニナ』観に行ったといっても過言ではありません!
あと、キャストでいえば、アンナの不倫相手であるヴロンスキー役のアーロン・テイラー・ジョンソンは、あの『キック・アス』の主役の人ですが、こんなに美男子だったのかとびっくりします(なんだよ、ダメ男じゃないのかよ)。また、アンナの兄オブロンスキー役のマシュー・マクファディンは、2005年の映画『プライドと偏見』ではキーラ・ナイトレイの相手役を務めていたのも面白いところ。
まとめてしまうと、『アンナ・カレーニナ』はなかなか多層的に楽しめる映画だと思いました。原作はぜひ古典新訳文庫の『アンナ・カレーニナ』でお楽しみください。
映画化関連でいえば、古典新訳文庫『グレート・ギャッツビー』も、レオナルド・ディカプリオ主演『華麗なるギャツビー』の6月14日公開に先立って、映画オビになります!古典作品はどうしても他社との競合になることが多いのですが(笑)、本作の小川高義訳はとにかく読みやすいことで定評がありますので、ぜひ古典新訳文庫で「予習」してから映画をご覧ください!