チヌア・アチェベ(1930―2013)は「アフリカ近代文学の父」と呼ばれるナイジェリアの小説家です。20世紀初頭から続くイギリスによる植民地支配の中で生まれたアチェベは、日常生活では現地の古い伝統や文化に触れながらも、ヨーロッパ型の教育を受けた知識人でした。ナイジェリア独立間近の1958年に刊行された『崩れゆく絆』は、現地の激変する社会の中で生きる人々の姿を描いた作品で、刊行されるやいなや世界中で称賛を浴び、現在全世界で1000万部売れていると言われています。しかし、アチェベ以前にもアフリカ文学は生まれつつあったにもかかわらず、本作がアフリカ近代文学の原点とされ、空前の大成功を収めたのはなぜなのでしょうか。
今回の読書会では、『崩れゆく絆』の翻訳者であり、アフリカ文学の専門家でもある粟飯原文子さんをお招きし、本作の翻訳にまつわる工夫や苦労、読みどころなどを語って頂くとともに、アフリカ文学誕生の経緯、変化、そして現在について、解説していただきます。