1860年に発表された『初恋』は、ドストエフスキーやトルストイが大作を次々と発表していた60年代においても際立った存在感を示していた傑作で、作者自身がもっとも愛した自伝的中編です。年上の公爵令嬢ジナイーダに一目で魅せられた16歳の少年ウラジーミル。彼の初恋の甘く切ないときめきやふるえが、主人公の回想のかたちで綴られます。今回はこの『初恋』という作品の魅力について、またトゥルゲーネフを日本で最初に紹介し、日本の近代小説の成立に大きな影響をおよぼした二葉亭四迷の翻訳について、翻訳者の沼野恭子さんに語ってもらいます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)