フランス軍がドイツ軍の電撃戦の前に敗走を重ねるなか、無益かつ危険きわまりない偵察飛行任務を命じられた「私」。路上に溢れる避難民を眼下に目撃し、容赦ない対空砲火に晒されるうち......
『ちいさな王子』『夜間飛行』で有名なサン゠テグジュペリが第二次世界大戦中の実体験を元に、困難な飛行任務をリアルかつ思索的に描き、独自の哲学へと発展させた傑作、それが『戦う操縦士』です。発売されるや、ヒトラーの『我が闘争』に対する民主主義からの返答と評されてベストセラーとなった本書ですが、そこに描かれた戦う者の思い、人間の存在と死の意味への問いかけは、いまでも、そしていまだからこそ、本書を読む者の胸に響きます。
その後、ふたたび敢然と飛行機に乗り込んで参戦し、戦死を遂げたと見られるサン゠テグジュペリ。彼の生き方と、彼の物語は、私たちに何を伝えているのでしょうか。今回の読書会では『戦う操縦士』の翻訳者でフランス文学者の鈴木雅生さんをお招きし、本書の魅力についてたっぷり語って頂きます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)