5月17日(金)に公開になった映画『コレット』。光文社古典新訳文庫『青い麦』、『シェリ』(ともに河野万里子訳)などで知られるコレットが、夫のゴーストライターとして作家デビューして成功したのち、自立するまでを描いた映画です。トルストイ原作の『アンナ・カレーニナ』の映画版でも主役を務めたキーラ・ナイトレイがコレットを演じています。
コレットといえば、三度の結婚、同性愛経験、義理の息子との関係など、その「恋愛の奔放さ」に目が向きがちですし、今回の映画でも、なかなかに進歩的な恋愛体験が描かれてはいます。実際、その恋愛経験はその後の作品に色濃く反映されています。
とはいえ、この映画を観て「はっとする」のは、コレットがその後語り継がれるような自由な恋愛に目覚める以前に(あるいはその初期くらいには)、すでに当時のベストセラーとなる「クロディーヌ」シリーズを書き始めているという事実です。読む者の心をぐっとつかむテーマや文体など、コレットの作家としての「天賦の才」とでもいうべきものは、この頃から際立っていたのだと思います。映画に出てくる「クロディーヌ」シリーズは残念ながらいまは日本語では一般には読めませんが、たとえば『シェリ』を読めば心情描写・情景描写における筆力に圧倒されることは間違いありません。
もちろん、初期においては、ベテラン作家である夫からの勧めや指導といったことも作家コレットを形づくった重要な要素ではあったでしょうし、この(不埒な)夫なしでは当時は作家として立つこともなかったかもしれません。しかし、そこから自立して、さらに大作家になった(そこはこの映画では描かれませんが)ところがコレット自身の偉大さなのです。この映画では、まさにそこを観てほしいと思います!