自由平等・絶対平和の追求を主張し譲らない洋学紳士君と、軍備拡張で対外侵略すべしと激する豪傑君。受けて立つ南海先生の持論は二人に「陳腐」と思われてしまうのですが......。三人の酔っ払いが正論あり、暴論あり、極論ありで討論したすえの結論はいかに? 東洋のルソーと呼ばれ、自由民権運動の理論的指導者であった中江兆民が、近代国家としての日本が抱える問題、とるべき進路について、自らの真意を絶妙な距離感で「思想劇」に仕立てたのが、今回取り上げる『三酔人経綸問答』です。余命一年半を宣告されてのち、自らの思いを綴った『一年有半』とあわせ、兆民の思想の先見性と現代性について、また人物としての魅力についても訳者の鶴ケ谷真一さんに語っていただきます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)